読み物

vol.34:安江和宏雪合戦に燃える男たちの熱い冬

2007年1月27日、島根県浜田市旭町の体育館で行われた「雪合戦旭2007」の会場に、ひときわ異彩を放つチームが現れた。迷彩服に身を包んだ9人の男たち。この雪合戦大会にエントリーした、れっきとし...

ひとり日和

「情動を抑えた書き口」と評すると作品の理解を取り違える。 感情が抑制されているのではなく、感情そのものがある種、未熟で未発達。鋭敏な角度を有しながら、未だその在り処・出処が認識されておらず、が故に...

最悪

やっかいな作品。 少々の息苦しさを覚悟した方がいいかもしれない。闇の中を手探りで歩くような閉塞感も味わう。どう終結するのかわからないまま、スローテンポに耐えたりもしなければならない。 銀行勤めのO...

泰安天行

父方の祖父は、若い時分、大層なろくでなしであったらしい。 仕事をさせれば、他人の半分の時間で、他人の倍以上はこなすという器用さであったにもかかわらず、ある時突然「俺は歌唄いになる」などと言い出し、ろく...

イン・ザ・プール

電車中読者の方はご用心。 思わず「アハハ」とやっちゃって、慌てて周りを見回したりすることになる。間違いない! 「イン・ザ・プール」を含む短編5話のオムニバス。 「伊良部総合病院」の地下にある神経...

ウランバーナの森

独特な読後感。 読み出し、チョイ面倒っちかったりもする。 特異な雰囲気になじんだころには、先を急いで読みたくなっている。 ひどい便秘が解消されるまでのイキサツ。言えば尾篭な話に、なんということか...

邪魔

さてこれは刑事もの? 刑事が犯人を追うのだからして。いやしかし、ちょっと枠外のような。 では、サスペンスなのか? んーん…サイコといえば言えるな?。確かに。 刑事ものであり、サイコ...

vol.33:古瀬浩史「自然」と生きる、中年のび太

インタープリターという言葉をご存じだろうか。ひとことで言えば「自然の案内人」。 ただ、自然のなかの木や生き物などの名前を教えるだけでなく、その場所の生態系、そこに暮らす人との関わり、歴史など、さ...

サウスバウンド

まあ、面白いから読んでみて! あっという間に上下巻を読み通してしまう。 2006年度の本屋大賞第2位ランキングだけのことはある。 いうなれば世間の常識を逸脱した「いっぷう変わった」両親を持つ少年の...

残虐記

小気味いいスピード感、チャーミングな舞台設定のミステリーといった桐野作品に対する既成概念を捨てなければならない。 空恐ろしい作品。読み終えて、ブツブツと鳥肌立った皮膚が治まるのに時間を要す。何かの...

vol.32:上野隆幸軽井沢で築窯・第2の人生!

「どうして『陶芸家になっちゃったか』よくわからないんです」 陶芸家・上野隆幸氏は首をかしげた。 「土」に魅了されたとしか、言いようがない。ただの「土くれ」が美しい形に変わる。水ひき・成形の時の、...

墓地を見おろす家

おっと! 「結局何がいいたかったのか?!」「人間観・自然観は?」「一体、何がしたかったのか!?」 そーゆーの、ちょっと脇へ置いときましょうよ。 まあ、まあ、なし崩しに主題があらぬ方向へ流れたとして...

愛人 -ラマン-

恐ろしく感覚的。説明がすっ飛んだ舌足らずとも思える短か目のセンテンス。 大昔前に、ざざっとの整理でファイルしたアルバムの写真をめくっているような。どうかすると時々、2、3ページ戻って読み直さければな...

モデラート・カンタービレ

「普通の速さで」「歌うように」。 作中、たびたび目にする曲調を表す音楽用語。さて、それが表題とされているわけが、読み終えてなお、想像の域を出ない。 文庫本わずか144ページの短編。ストーリーがある...

vol.31:Thomas G. McBayこだわりコーヒーで目覚める街

場所はカリフォルニア州ロスアルトス市。 小さなダウンタウンは通常目にするざわめきとはまるで無縁で、どこかの高級避暑地を思わすほどゆったりとした空気と時間に包まれている。 その一角にこの夏新しくオ...

vol.30:椎名勝巳バリアフリーな海の魅力を伝えたい!

静岡県伊東市に、赤沢漁港というスキューバダイビングのポイントがある。 もともと漁船を引き上げるための、なだらかなコンクリートスロープを利用して、ダイバーは海に入っていく。 ウエットスーツに身をつ...

知りたがりやの猫

世の殿方・男性諸氏。 「あら〜いや〜ん」 しどけなく愛らしい甘えの裏で「バッカめ」と舌を出す存在のことをよもやお忘れ召さるなかれ。 様々な形の恋愛話・短編11編。見栄っ張り、嘘つき、そのくせコロッと...

ふいに吹く風

信州の四季の移ろいや身辺の様々、医療従事者としての日々に寄せたエッセイ。それぞれは文庫の、わずか2ページにも届かなかったり、多くても3ページほどだったり。 ところが案外読み終えるのに時間がかかる。1...

阿弥陀堂だより

懐かしさで満たされる。 日本の原風景の中で「和」な「死」が語られる。 人間、このように生き、このように逝けたら、どんなにいいだろう。四季折々の恵み拠り生かされるを魂が識り、自然の一部として悠々と生き...

vol.29:津田忠彦京劇って、面白いんですよ

京劇にかかわって早くも20年になる。日中文化交流の一環として、代表を務めていた劇団世代の訪中公演が行われた1984年、訪中団団長としてさまざまなトラブル処理に追われ、睡眠時間2時間という過酷なスケジュ...