「情動を抑えた書き口」と評すると作品の理解を取り違える。
感情が抑制されているのではなく、感情そのものがある種、未熟で未発達。鋭敏な角度を有しながら、未だその在り処・出処が認識されておらず、が故に表出方法とはけ口を見い出せずにいる。
ってな「年ごろ!」が確かに誰にでもあったことに思い当たる。
とり巻く状況把握そのものも、対する反応のありようも未整理だから、内側との因果関係・関連性も整頓できようもない。ただただ、少女から女性への移行期の微熱を帯びた細震に身を任すより術もない。
気負いなく、飾りなく等身大に表現されると、こうも新鮮で初々しく、そしてうっすら切ないものかと感心する。
幾星霜、年を経てすねに傷もたくさん負い、生き延びるためにはある種鈍磨してしまった感覚を、幾重にも重なったカサブタを少し引き剥がしても思い起こしてみたくもなる。
同世代には共感を、トシカサのお歴々にはうっすら哀しい懐かしさを誘う1冊。
第136回芥川賞受賞作。
作者名:青山 七恵
ジャンル:小説
出版:河出書房新社