恐ろしく感覚的。説明がすっ飛んだ舌足らずとも思える短か目のセンテンス。
大昔前に、ざざっとの整理でファイルしたアルバムの写真をめくっているような。どうかすると時々、2、3ページ戻って読み直さければならなかったりする。
危なげな、早熟であるがゆえになお甘美な官能、魅惑的なデカダンスとステキなアンニュイ。少なくとも理屈でものを考えるのを止めて、触角と連動している感覚を自由にして、それらを堪能する。
感覚は感覚で、官能は官能でつかまえようとする試みは、ブレーキの踏み方を教わらないままハンドルを握ってしまうような危険も伴うかもしれないが、後先考えずに飛び去る車窓に魅入る快感を優先してみたくなる時だってあるのだ。
なに、心底、恐怖したなら、気がつけば教わらなかったブレーキを足が勝手に踏んでいたりする。そういうものだ。
作者が何者か知っていても、知らなくても作品に漂うエーテルを中毒するぐらい吸引すれば、たちまちビリビリ痺れた唇のままイマージュの森のさ迷い人となることだろう。
酔いしれて。
作者名:マルグリット・デュラス/清水徹 訳
ジャンル:小説
出版:河出文庫