勝手に読書録

エチオピアからの手紙

フレッシュ&ジューシー。チャーミング&キュート。そして、切なくて温かい。などいってもラブストーリーなんかでは決してない。 末期がん患者と向き合うドクターの話しだったり、内戦激するカンボジアの野戦病院...

先導者・赤い雪崩

「山岳小説」とくくられるのを著者は必ずしもよしとはしていなかったというが、「山岳小説」と呼ぶに最も相応しい作品群を遺した作家は他にないのではないか、と思えてならない。さすれば本作はぜひとも「山岳ミス...

クライマーズ・ハイ

いやいや、面白い!! 異様にヘビーな主題が、しかも複数折り重ねられる。その一つ一つがそれでけでもメインになり得る質量を備えている。それらが絡み合い物語りが構成される様は、色とりどりの絹糸がやがて、緻...

孤高の人 上下

「解説」を読むまでもなく、実在の人物がモデルであろうことは、作品を読み出せばすぐに察せられる。昭和初期に登山家として名を馳せた加藤文太郎が実名で登場する。 無口で人付き合いが苦手、並外れて山足の速...

銀嶺の人

紛れもない「山女」の話である。岩壁を自在に駆け、銀嶺にスクッと立つ美しい雌カモシカ。あまりにもの清清しさに雄カモシカでさえ、その角を下ろす。 クライミング史上に足跡を記した実在の人物がモデルと聞け...

栄光の岩壁

「山岳小説」であり「冒険小説」「青春小説」であり、ちょびっと恋愛小説かな? なんともチャーミングな作品。ひきつけられて一気に読んでしまう。 背景を「山岳」に求めたという生半可を越え、山々はあくまで...

氷壁

厳冬の北アルプス北穂高、前穂高、奥穂高岳登攀の描写は著者もまた相当の「山屋」ということを言わずもがなで語っている。恐ろしく「山岳小説」であり、幾分やっかいでしんきくさい「恋愛小説」であったりもする。...

心にナイフをしのばせて

事故でもなく疾病でもない。いわれなき犯罪によって肉親を失った家族のグリーフワークは家族のその後の人生を変えてしまうほどに困難を極める。メディアの餌食にならざるを得なかった心傷も想像を超えて深い。外側...

富士山頂

表題から想像してかかると肩すかしを食らう。富士登山の話ではない。富士山頂に「測候レーダードーム」を建設するという難事業の成るまで。実際に昭和39年に竣工された実話を元に、その上著者が当事者でもあった...

縦走路

誰がメインキャストで、何のお話なのか?惑わされてはいけません。あくまでも表題「縦走路」をお忘れなきよう。 2月・厳冬の「八ヶ岳縦走」。紛れもない冬山を「ヤル」ということのなんたるか。厳しくも美しく、...

アラスカ物語

「あっさり」に過ぎるのでは、と思える文体だが、少し読み続ければそのなぞは解ける。 過度な表現を抑え、綿密な取材で足跡を追いながら、事実を超えた人の真実を伝えるに必要最小限が著者の視線で語られる時、読...

照柿・上下

超スローピッチ。はっきり言ってキツイ。シンドイ。幾分ダルイ。 が、なぜか辛抱して読んでしまう。 こめかみの奥で行き場を失った土石流のように血管がドクドクと音を立てる。後頭部を内側から圧迫されるような...

リヴィエラを撃て

時は1972〜1995年の長きにわたって背景となる。中国が文革から民主化へ路線をシフト。日・英・米の対中関係の利害と外交政策が絡む。同時期、英はアイルランド紛争に頭を抱える。 政治・経済の裏舞台で暗...

エンブリオ

これはまた、行き帰りの通勤電車のお供に特におすすめである。息もつかずに読めるといって、時々はいやおうなく読みに切れ目が入った方がいい。そうでもしないと虚実の境目を見失う。それほど「医」の表裏・真偽を...

光源

ピッチの早いサスペンスを期待してはいけません。 最後まで警察官も刑事も探偵も登場しなければ、殺人事件も起きない。死人も出ない。 光源とはすなわちライティング。「映画を創る」裏舞台のお話。 テンポが...

逃亡

「ヒトラーの防具」をさらに越えたボリューム。上巻が623、下巻が581ページの超大作。 いやいや、ちーとばかしキツイですぞ。 主人公・森田征二は大戦中、憲兵それも特高として軍務していた。 中国人にな...

ヒトラーの防具

ジャケットのポケットに入れて持ち歩くと、間違いなく型崩れする。上下とも550ページからの超長編。まずはお覚悟! 「防具」とは日本の伝統武道「剣道」で使う「防具」。つまり「面、籠手、胴、垂れ」を指す。...

薔薇窓

各400ページちょいが上下。そこそこのボリュームだが、読み始めてみると苦にはならない。幾分ゆっくり目なテンポにもすぐに慣れ、むしろ100年前の時代性をよく表現するに貢献しているとわかる。 フランスは...

12年目の映像

これは年代によって読後感が大きく違うだろう。どの世代にとっても、「ずっしり」な「作品」であることに異論はないはずなんだが。 東大闘争から12年目という設定。「映像」とは闘争を外側から撮りメディアを通...

賞の柩

賞とはノーベル賞のことである。 英国人研究者アーサー・ヒル博士のノーベル医学・生理学賞受賞決定から物語は始まる。ストーリーを引っ張るのは同じ筋肉の収縮機構に関する研究をフィールドにする日本人研究者の...