クライマーズ・ハイ

いやいや、面白い!!
異様にヘビーな主題が、しかも複数折り重ねられる。その一つ一つがそれでけでもメインになり得る質量を備えている。それらが絡み合い物語りが構成される様は、色とりどりの絹糸がやがて、緻密でそれでいて温かみのある織り柄に仕上がるペルシャじゅうたんのよう。
さて、表題「クライマーズ・ハイ」だが、なぜこの表題なのか追うだけでもスルスルと読み進められる。
御巣鷹山・日航機墜落事故を事故現場当該県の報道側、ローカル紙の編集サイドからとらえ、関わる記者たちの緊張と奮闘、感情の綾を描き、事故現場とは別の「現場」のすさまじさがまざまざと伝わる。

クライマーズ・ハイとはひたすら頂を目指す過程で、いつしか高度や危険に対して麻痺して、恐怖心が失せてしまった状態をさす。登頂後、あるいは下山後ではなく、例えば岩壁ハング中にハイが解けたら…。痺れ返しで増幅された恐怖心に押しつぶされ、身動きすらできなくなる。

で、クライマーズ・ハイと航空機事故、報道サイドがどう絡むのか?まあ、お楽しみにされたし。
そうさね、人生も走るだけ走っているうちは、ただただ夢中。ふと立ち止まって来し方を振り返り行く末を見晴るかす時、背中を一筋伝うゾワゾワとした冷たいもの。ってな感じ?!


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作者名:横山 秀夫
ジャンル:小説?
出版:新潮文庫

クライマーズ・ハイ(文春文庫)