ふるさと

【特別連載】おそうじマン日記(その11・了)

※前回へ 冬休みになり、新しい年が明けて、1月4日。明日から園児たちが登園してきます。 掃除をしていると、一人のかわいらしいおばあさんが、両手を差し出してふらふらと入ってきました。 顔がほんの...

【特別連載】おそうじマン日記(その10)

※前回へ そして当日、私は感謝祭に行きました。 先生方、職員の方全員と、保育園中の園児のみなさんが、並んだり、先生に抱っこされたりして集まっていました。 園長先生から、 「自然の恵みに感謝しま...

【特別連載】おそうじマン日記(その9)

※前回へ秋になって涼しくなりました。ある日、ポットや食器を集めに教室へ入ったときのことです。「いつもおそうじありがとう」声がしたほうを見ると、ごんた君が頭に手を置いて、照れくさそうに笑っていました。す...

【特別連載】おそうじマン日記(その8)

※前回へそれからまた三週間ほどが経ち、病気が治ったごんた君が、久しぶりに保育園にきました。でも、出会っても気付かない様子で、かすみのかかったような目をして、ぼーっと無表情のまま通り過ぎていきました。そ...

【特別連載】おそうじマン日記(その7)

※前回へしばらく経った日のこと、「うーん、うーん」苦しそうなうめき声が聞こえてきたので、階段の下へ行ってみると、ごんた君がぐったりと倒れていました。「大丈夫? どうしたの?」「かまうなっ。じぶんのこと...

【特別連載】おそうじマン日記(その6)

※前回へそしてまた何日か経ったお昼寝時間のことです。いきなりごんた君がはね起きて、先生を指差して言いました。「おーい、みんなー。おきろ、おきろーっ。この女のいうこと、きくなーっ。大うそつきだぞー。みん...

【特別新連載】おそうじマン日記(その5)

※前回へ毎日トイレの掃除をしていると、たまに誰かが来ます。その日はまりちゃんが来ました。「トイレ、おかりしてもよろしいでしょうか?」「はい、どうぞ使ってください」「とてもきれいな言葉づかいですね。どな...

【特別新連載】おそうじマン日記(その4)

※前回へ三日目は、玄関でごんた君が待ちかまえていました。「こんにちは」と私が言うと、「おそうじ、がんばってね」ごんた君がとても素直に言いました。あっけにとられていたら、私をのぞきこみ、「べろべろ、ばあ...

【特別新連載】おそうじマン日記(その3)

※前回へ 二日目。「こんにちは、こんにちは」と言いながら、保育園の玄関に入っていきました。 五〜六人の園児が、白目をむいたり知らんぷりをしたりしました。 靴を履き替えていると、バタバタッと元気...

【特別新連載】おそうじマン日記(その2)

※前回へ ため息をついて掃除に戻ると、きく組の前に女の子が一人立っていて、こちらをじっと見ています。ゆっくりそこへ近づいて行くと、その子はニッと笑いました。 「わたし、立ってるの&hellip...

【特別新連載】おそうじマン日記(その1)

三月の終わりの頃、私は、ある保育園で働くことになりました。これは、その一年目の一年間のお話です。一日目。十二時半に保育園に着きました。「おしっこたれーっ。うんちたれーっ」と、ちっちゃな男の子が、叫んで...

30年前、郡山の記憶

昨夏のことだった。 縁あって……いや、結果的にその地に降り立つ理由となった仕事依頼は霧消したことを考えると、縁というより奇縁であろうか。 奇縁あって福島県は郡山の駅に降り...

チビ

去年の夏、新潟に帰省した。 実家の茶の間でくつろいでいると、親戚から電話が入り、母が取る。 「今さ、チビが帰って来ったんさ」 チビ。末っ子長女である、私のことを指している。 「ほれチビ、もうすぐご...

泰安天行

父方の祖父は、若い時分、大層なろくでなしであったらしい。 仕事をさせれば、他人の半分の時間で、他人の倍以上はこなすという器用さであったにもかかわらず、ある時突然「俺は歌唄いになる」などと言い出し、ろく...

ビバラ方言

「ふるさとの訛り懐かし停車場の人込みの中に其を聞きに行く」 そんなふうに詠っていたのは、石川啄木だっけか。 首都圏での生活を始め、もうじき10年になる。地方出身者で溢れている土地のはずだが、その訛りや...