【特別連載】おそうじマン日記(その10)


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※前回へ

そして当日、私は感謝祭に行きました。
先生方、職員の方全員と、保育園中の園児のみなさんが、並んだり、先生に抱っこされたりして集まっていました。
園長先生から、
「自然の恵みに感謝しましょう。すべての生命と、世界中の人々と、お父さんお母さんに感謝しましょう」
と、お話があり、皆でお祈りをして歌を歌いました。
感謝祭の終わりのころに、私は、園児のみなさんから、かわいいお礼の言葉ときれいな歌声、きれいなお花をいただきました。
その日の午後の出勤のとき、玄関で園児たちと出会ったので、私はお礼を言いました。
「みなさん、先ほどはどうもありがとう」
すると、園児たちは横一列に並び、胸をはって答えました。
「どーお、いたしぃましてぇーっ」

まもなくクリスマスが近づき、園児たちは、クリスマス会の音楽劇のセリフを歩きながら口ずさんだり、王様や大臣の役や、やりたい役をかわりばんこにやったり、トイレの中でも歌ったりして、練習に励んでいます。

園児たちは、私と出会うと、少し恥ずかしそうに笑って、ありがとうと言いました。
そのたびに私は、仕事だから当たり前のことをしているのに、お礼を言われるなんて私のほうこそありがたいのですと、心の底から思うようになりました。
そう思うと胸がいっぱいになり、喜びの気持ちがあふれてくるのです。
みなさんに出会えたおかげで、毎日喜びの気持ちで働くことが出来るのが、ほんとうにありがたいと思いました。
こんな気持ちは、生まれて初めてです。
ありがとうの心の花とは、このことだったのですね。園児のみなさんの優しい心が栄養となって、私の固く閉じていた心の花も咲きました。
保育園は、ありがとうの心の花が満開です。
もう嫌なことを言う子は誰もいません。
子供時代のかくれんぼで、見つけてもらえずにほうっておかれた寂しい日々と比べると、ほんとうに夢のようです。
そう思って職員室の前に立ち、保育園中を見渡すと、金色の温かな光が天井や床を照らし、きらきらと輝いていました。
教室から、楽しそうな笑い声や、元気な話し声が聞こえています。
ピアノときれいな歌声が流れてきました。


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 どこの誰でも 人はなりあえるさ
 友だちになるために 人は出会うんだよ
 同じような 優しさ求めているのさ
 今まで出会った たくさんの
 君と君と君と 友だち
 友だちになるために 人は出会うんだよ
 一人でさみしいことが 誰にでもあるから
 誰かを傷つけても 幸せにはならない
 君と君と君と 友だち
 これから出会う たくさんの
 君と君と君と 友だち

私は、天にも昇る心地で、踊るように掃除機をかけていました。(つづく)

絵・稲葉 美也子