勝手に

白い夏の墓標

徹頭徹尾、箒木作品のスピリットを楽しめる。 目次に並ぶ耳慣れない章タイトルが何を意味するのかは、第1章の扉をめくれば即座に理解する。さて何の話しか?など訝る暇もない。 章毎に扉裏にタイトルの意味が書...

カシスの舞い

本書を入手したら即座にカバーをかけること。 巻末「解説」は最後に読むこと。箒木作品は初めてという向きには特に上記2項厳守をお勧めする。 さて本書だがジャンルの記載はあえて省いた。ともかくも表題「カシ...

受精

たとえば船の長旅のお供には是非おすすめの一冊。  結構なボリュームなんだが、読み出すと止まらないので、船の揺れを忘れる。 下手な酔い止め薬を服用して寝込んでいるよか、よっぽど楽しい船旅にな...

夏と花火と私の死体

これはびっくりな作品。 ちょっとした「はずみ」で友だちを木の上から突き落として殺してしまった幼い女の子が兄とともに、四苦八苦して死体を隠す様を、一貫して「殺された」私が語る。 「殺された」私は「...

凛冽の宙

ほぼ日本の今の今が語られる。 「そも不良債権とは?」「なぜ膨れ上がったか」「どう処理されようとしているか」そして政財界に巣食うやからが「どんなふうにうごめいているか」、それらの絵解きを主軸にストー...

月のしずく

96年から97年にかけて文藝雑誌に掲載された7編を編んだ短編集。 ちょっと疲れてしまって休息が欲しい時がある。 さりとて布団に潜り込んで惰眠をむさぼる気にもなれず、体を休めながら「読書」でもいかな...

GOTH 僕の章

さて、本作は何といえばいいのか。 「触れれば切れるようなセンシティヴ・ミステリー」とは帯の謳いだが、なんと仕分けしても、どこかはみ出すような感があるような・・・。 「殺す側」と「殺される側」に2分...

孤独の歌声

完全無欠かどうかは別として、これはカンペキ、ミステリーである。 テンポは幾分、ゆっくり。 カナリの頻度で人称が変わるのは、登場人物の特性を客観的に洗い出すよりむしろ、個的な心理を個的なまま現して読...

家族狩り

平成8年第9回山本周五郎賞受賞作品。 本作品は「永遠の仔」の原点として位置付けられている。 そのことについて「確かに」と同時にかなりの「異質感」も持ってしまうのはなぜだろう。 例えばA項を赤としZ...

森の中の海

例によって「わが国は・・・」がそこここに連発される。 いつのころからか説教節が重奏低音のように流れる作風になっていったのは、と想いを巡らしてみる。 これが「鼻につく」向きもあるには違いない。 ほぼ...

溢れた愛

1996年から1999年に「小説すばる」掲載された短編4編を書き直し、まとめられた。 巻末「謝辞」に本篇を指して ___ある長編の執筆過程から新たに浮かんだ素材やテーマを、違う形で表現した と...

永遠の仔

恐ろしく分厚い上下巻、しかも中は細かい字の2段組が読み始めると止まらない。 老人病棟のナース、弁護士、刑事、登場人物の周辺を描くことで、つまり社会の様々な様相を巧みに広げてみせる。軸のストリー展開...

花伽藍

2000年11月から2001年12月に小説新新潮掲載の5編を掲載順に編んだ短編集。 まず「鶴」 男も顔負けの凛々しい太鼓を打つ夏の申し子とホタルの化身の出会いと別れ。 ホタルは悲しみに自らの身を焼...

風のかたみ

おどろおどろしき妖術を操る陰陽師など、時代物ならではの面白みも堪能しつつ、今昔物語に題材を求めた王朝ロマン、雅にして、妖しくも繰り広げられる、原型ともいうべきクラシックな恋物語も飽きず読み進める。 ...

サグラダ・ファミリア 聖家族(文庫)

通常とは異にするセクシュアリティーを有す者の恋物語の底に、読者は別の世界を見る。 「恋愛」という形を借りた一つの家族の誕生と魂の再生の物語なのである。 男の要らない女と女の要らない男、そしてこども...

プラナリア

表題の「プラナリア」他5作を納めた中編集。 全く別の5作品が、まるでオムニバス仕立ての一つの作品のように感じられる。 各作品に書き分けられた5人の女たちは、実は現実の女の多面性を言い当てているから...

女ざかりの痛み

なんともはや、正直なエッセイ集である。 「家にいたい女」も「仕事したい女」も必読の書かもしれない。 なぜなら、最後一枚の皮まで剥いだ女の中身は、多少の個別な差異はあるにせよ、そんなには違わないはず...

猫背の王子

人を何かへの反応タイプに区分するとして、その一つの方法に小説を読んで「欲情する」「しない」というのはどうだろう。 ワウワウやスタチャンのピーチタイムムービーでは「しない」けれど小説では「いける」とい...

顔に降りかかる雨

あと書きに、本作品は作者がミステリー作家として本格デビューし、江戸川乱歩賞受賞なった作品であり、探偵「村野ミロ」シリーズ誕生の土壌ともなったとか。 確かに読みながら、読み終えて「続き」があるだろうと...

木を植えた男

なぜとはなしに最初から読み始めた。ぱらぱらっと頁をくった時にきれいな挿絵が目に飛び込んだせいかもしれない。 たいがいは何かを読み始める時、さきに作者・訳者後書きに目を通す。 映画の試写なら、パンフ...