なんともはや、正直なエッセイ集である。
「家にいたい女」も「仕事したい女」も必読の書かもしれない。
なぜなら、最後一枚の皮まで剥いだ女の中身は、多少の個別な差異はあるにせよ、そんなには違わないはずだから、心底共感できるにちがいない。
艶歌の詩の文句じゃないが「女は泣きながら大きくなる」を実感する。
およそ先進国と呼ばれる社会では、女は同様の問題を抱えているのだろう。
しかしながら女が生き難いなら、男だってほんとうは同じなのだ。
ただそれに反応するセンサーがちょいと違ってはいるかもしれない。
あるいはロックがかかっていたりもする。
女の痛みを綴った個的な文章でありながら、対岸の男の痛みも書き分ける。ただし女のフィルターを通して。
セラピーのセッションについてのくだりがまた、興味深い。
男と女があって、子が存在し、子が存在して親が成立する。
あたり前といえばあたり前だが、いかにその相互関係が子の中に映し出されているか、いまさらながら慄然とする。
一つの家庭が象徴する心模様は、特殊に見えてその実、どの家庭にも等しく内包する、世代から世代へ受け継がれる避けがたい荷送りを浮き彫りにする。
深刻ではあるが、同時に回復もあるという希望も広げて見せてくれる。
これは「夜ごとの揺り籠、舟、あるいは戦場」「叫ぶ私」と並び、森作品を読みこなす上で欠かせないキーであり、男も必読の書でもある。
作者名:森 瑶子
ジャンル:エッセイ
出版:集英社文庫