短編4本。うち1作目の表題「動機」を総タイトルに編まれていることに納得する。 人心の奥底で発酵し、ついには理性のフタを弾き飛ばす「動機」。それら4つの動機がどんなことを誘発するか。4作それぞれの意外...
フレッシュ&ジューシー。チャーミング&キュート。そして、切なくて温かい。などいってもラブストーリーなんかでは決してない。 末期がん患者と向き合うドクターの話しだったり、内戦激するカンボジアの野戦病院...
「山岳小説」とくくられるのを著者は必ずしもよしとはしていなかったというが、「山岳小説」と呼ぶに最も相応しい作品群を遺した作家は他にないのではないか、と思えてならない。さすれば本作はぜひとも「山岳ミス...
いやいや、面白い!! 異様にヘビーな主題が、しかも複数折り重ねられる。その一つ一つがそれでけでもメインになり得る質量を備えている。それらが絡み合い物語りが構成される様は、色とりどりの絹糸がやがて、緻...
中学校に入学したばかりの頃、私の斜め前の席に座っていた男の子。大きな目とやや尖り気味の口元が可愛らしいが、注目を集めそうなタイプではない。小学生の頃から"ボケ"と仇名される、どこか飄々とした雰囲気の持...
「解説」を読むまでもなく、実在の人物がモデルであろうことは、作品を読み出せばすぐに察せられる。昭和初期に登山家として名を馳せた加藤文太郎が実名で登場する。 無口で人付き合いが苦手、並外れて山足の速...
「男子厨房に入る」と銘打つ、いわゆる“男の料理”に胡散臭さを感じてきた。 吟味された食材でじっくり時間をかけて調理して、盛りつけの彩りもよく…。でも、片づけ...
紛れもない「山女」の話である。岩壁を自在に駆け、銀嶺にスクッと立つ美しい雌カモシカ。あまりにもの清清しさに雄カモシカでさえ、その角を下ろす。 クライミング史上に足跡を記した実在の人物がモデルと聞け...
ミュージシャンという仕事で大成するのは並大抵のことではない。それは日本の真裏に位置するブラジルでも同じことだ。 音楽を心の支えに生きる父、フランシスコは、息子たちをプロのミュージシャンにするため、なけ...
ジャングルジムが好きだった。幼稚園の砂場の横にある、くすんだ銀色のジャングルジム。ひょいひょいとてっぺんまで昇っていって、ちょこんと腰掛け、ひとりきりで空を仰ぐ。きもちいい。もちろん園庭にもジャングル...
「山岳小説」であり「冒険小説」「青春小説」であり、ちょびっと恋愛小説かな? なんともチャーミングな作品。ひきつけられて一気に読んでしまう。 背景を「山岳」に求めたという生半可を越え、山々はあくまで...
厳冬の北アルプス北穂高、前穂高、奥穂高岳登攀の描写は著者もまた相当の「山屋」ということを言わずもがなで語っている。恐ろしく「山岳小説」であり、幾分やっかいでしんきくさい「恋愛小説」であったりもする。...
★カトリーヌ・ドヌーヴ10年ぶりの来日決定! 最新作はフランス映画祭2007 オープニング作品 カトリーヌ・ドヌーヴ、というと、「シェルブールの雨傘(1964)」や、「昼顔(1967)」での可憐な...
事故でもなく疾病でもない。いわれなき犯罪によって肉親を失った家族のグリーフワークは家族のその後の人生を変えてしまうほどに困難を極める。メディアの餌食にならざるを得なかった心傷も想像を超えて深い。外側...
衝撃にも何種類かある。アクションもののように、画像の中の人やモノのアクティブな動き自体が衝撃的なもの。スプラッタのように、生理的嫌悪感が衝撃を与えるもの。そして本作はといえば、ストーリーそのものが観客...
第二次世界大戦中、日本国内でただひとつ地上戦が行われた沖縄本島南部には、「ガマ」と呼ばれる自然洞窟がいくつもある。日本軍と住民の避難壕として使われたガマの中では、さまざまな悲劇がくり返されたという。平...
映画というものは、現実逃避の道具でもある。日常の様々なしがらみから逃れ、別世界へと心を解き放つ。現実からかけ離れたSFもいいが、現実に即し、尚且つ少しだけ浮世離れしているくらいが効果的なこともある。 ...
たとえ辛い過去があっても、たった一人の大切な人がいるだけで生きていける。そんな珠玉のメッセージがこめられているのが本作だ。 心がなくなってしまったかのように、友だちも作らず趣味もなく、機械のように日...
『Shall we ダンス?』の周防監督が日本の刑事裁判制度の問題点を浮き彫りにさせる社会派ヒューマン・ドラマの登場だ。 就職活動中の主人公は面接へ向かう途中、電車の中で痴漢に間違われて現行犯逮捕され...
表題から想像してかかると肩すかしを食らう。富士登山の話ではない。富士山頂に「測候レーダードーム」を建設するという難事業の成るまで。実際に昭和39年に竣工された実話を元に、その上著者が当事者でもあった...