短編4本。うち1作目の表題「動機」を総タイトルに編まれていることに納得する。
人心の奥底で発酵し、ついには理性のフタを弾き飛ばす「動機」。それら4つの動機がどんなことを誘発するか。4作それぞれの意外性がたいそう面白い。仕込まれた因の創り方、経緯の構築の果ての「果」の導き方、いずれも大向こうをうならせる構成力だ。
期を異にして書かれた4作だろうが、まるで最初からオムニバスとして想定の上書かれたかのように見事に「動機」に終結している。
1作を読み終えて次作に読み移る際にともすれば要求される「仕切りなおし」感のダルさはなく、気がつけば苦なく1冊読み終えている。
人間、言動にはよっぽど注意せねばならない。どこで、どう他の誰かの胸に「動機」の種が仕込まれるかわかったもんじゃない。くれぐれもお気をつけあそばせ。
おお、コワッ!!!
作者名:横山 秀夫
ジャンル:小説
出版:文春文庫