読み物
「あっさり」に過ぎるのでは、と思える文体だが、少し読み続ければそのなぞは解ける。 過度な表現を抑え、綿密な取材で足跡を追いながら、事実を超えた人の真実を伝えるに必要最小限が著者の視線で語られる時、読...
演じることが面白くて、役者でいられることを心の底から楽しんでいる女優がいる。本格的に映像の世界にデビューしたのは、50歳を過ぎてから。もちろん、主役というわけではないが、どんな役でもそれぞれの役...
超スローピッチ。はっきり言ってキツイ。シンドイ。幾分ダルイ。 が、なぜか辛抱して読んでしまう。 こめかみの奥で行き場を失った土石流のように血管がドクドクと音を立てる。後頭部を内側から圧迫されるような...
「リリーちゃんがナオキ君のこと大っ嫌いって言ってた?」年長組みの教室に、可愛らしい大声が響く。さっちゃん。スモックを軽やかなスキップと共に振り回しながら、満面の笑みでナオキ君に言い放った。あたしはナオ...
vol.24:アデール・ルイーズ・ショウ日常のリアリティに息づくアート
移民と異文化、歴史とモダンが反りあうことなく、個々を十分に保つ街、サンフランシスコ。けれども、この街に存在するあらゆる混在は、「猥雑」ではなく「融合」という言葉のほうがしっくりとくるから不思議で...
高校生活3年間の「恋」戦線は3戦3敗1引き分け、と書いた。すでに「あれ?」と思われた向きもおありだろう。勘定が合わないものね。「1引き分け」の話である。もし獅子奮迅の働きぶりで、それでも戦いを分けたの...
沖縄本島中部にある宜野座村。観光地ではないが、沖縄独特のゆったりとした味わいのある場所だ。そんな宜野座村の海辺に漢那漁港がある。 島袋博幸さんは、そこで育った生粋のウミンチュである。十代のころから父親...
「またかよ」「節操のない!」の声があろうことは覚悟の上である。 相手によって自身の「本質的な何か」が変えられる、すなわち小さくはあっても、人生の一つの精神的分岐点と呼ぶべきを「恋」と規定するなら、これ...
私が大好きなアーティストを紹介したい。 その人は「唄の旅」を続けている大塚まさじさん。1960年代後半に産声をあげた日本のフォークソングは、さまざまな変容を続けつつ、70年代若い人々に圧倒的な...
時は1972〜1995年の長きにわたって背景となる。中国が文革から民主化へ路線をシフト。日・英・米の対中関係の利害と外交政策が絡む。同時期、英はアイルランド紛争に頭を抱える。 政治・経済の裏舞台で暗...
高校生の初恋全3戦のうちの2戦目の話である。 男子はニックネームを「ペンギンさん」といった。 いつもこう...胸を張って歩いている感じ、それがペンギンに似ていたような、それでいつしか「ペンギンさん」...
vol.21:丹羽知美ダーツDE親睦会!!今ではすっかり”リアルなお友だち”
大阪市内に大雨・雷・洪水注意報が発令されていた5月19日の夜、セレッソ大阪のホームスタジアムがある長居公園からほど近いダーツバー「Bar Milk Hall」に職業も年齢も異なる男女あわせて9人...
2月28日、講談社から発売された詩画集がある。『ゆめのあしおと』『あいのときめき』『おもいのことのは』という3冊。この詩画集をプロデュースしたのが、幾代昌子さんだ。昔懐かしい数々の詩に、ガブリエ...
これはまた、行き帰りの通勤電車のお供に特におすすめである。息もつかずに読めるといって、時々はいやおうなく読みに切れ目が入った方がいい。そうでもしないと虚実の境目を見失う。それほど「医」の表裏・真偽を...
ピッチの早いサスペンスを期待してはいけません。 最後まで警察官も刑事も探偵も登場しなければ、殺人事件も起きない。死人も出ない。 光源とはすなわちライティング。「映画を創る」裏舞台のお話。 テンポが...
「炊事・洗濯・裁縫、なんでも自分でやります。ほんと、家でも手のかからない亭主ですよ」 自分のことは自分で、が山男の原則と鈴木さんは笑う。 たとえばヤッケがほころんでいたとして、決して女房に頼んだ...
ある土曜日のお昼、レストランでシャンソンコンサートが開かれている。飯田みどりさんが舞台に上がった。ピアノの調べに体をゆだね、みどりさんはひと呼吸して歌い始めた。 曲は「待って」。ピタリ、恋の歌である。...
vol.17:柴田勝憲夢は軽トラ全国行脚。旅は「蜂つれ」花を求め。
埼玉県越谷市。いかにもだだっ広い関東平野を思わせる、見渡す限り広がる田畑の真ん中にポツンと梅の木に周りを囲まれた畑がある。養蜂家・柴田勝憲さんの畑だ。 畑の土手が一面、ホトケノザやオオイヌフグリ...
vol.16:生田康英カニつり名人の、ほんわか発明ストーリー
メカニカルに光るリール、レザー光線で彩られたデモンストレーション。大勢の釣りびとたちでにぎわうフィッシングショーの会場で、小さいけれどちょっと変わったブースが人目を引いていました。カニつり名人生...
「九段界隈 桜みち」という、1年に1度、桜が咲き乱れる季節に発行される本がある。千鳥ヶ淵の桜に魅せられて、お祭り気分が大好きで、とうとう本まで出してしまったのが國分紘子さん。國分さんの事務所がある九段...