琉球舞踊とアイヌ舞踊のコラボレーション
「北海道に行ったら、新鮮な海の幸を堪能する!」
多くの人たちがそう意気込んでやってくる一方で、1日目にして新鮮すぎる(?)魚に胃もたれをおこして音を上げる人もいる。そう、北海道の魚は脂が豊富なのだ。道産子達はそんな北海道の海の幸に「脂の乗った」という最高の賛辞を与える。
大雪山から雪の便りが聞こえてくるころ、秋鮭の遡上が盛んになる。晴れていたら豊平川河川敷を自転車で疾走するのが私のお気に入り休日コースだが、今日はしばし自転車を止めて、アイヌ民族の伝統儀式アシリチェップノミに参加した。
アシリチェップノミとは、鮭が遡上する時期を迎え、鮭の豊漁を祈願するアイヌ民族の伝統儀式。アイヌ語で「新しい鮭(アシリチェップ)を迎えるための儀式」を意味する。明治以来狩猟を禁止され、長らく途絶えていたが、昭和57年におよそ100年ぶりに復活した。民族衣装を着込み、祭壇(ヌササン)を作る。祭壇に森の神、村の神、水の神など様々な神様を祭る。マレックと呼ぶ魚獲り用のモリで鮭をしとめる。鮭を供え、今年の豊漁と人々の安全な生活をカムイ(神)に祈る。日本の法律では河川で鮭を獲ることは禁じている。そのため、儀式用に使う鮭は特別の許可を得て石狩川で獲ったもの。
カナダからも少数民族のゲストが来道
アイヌ民族は鮭をカムイチェプ(神の魚)と呼ぶ。秋鮭は厳しい冬の生活を支える貴重なタンパク源となっていた。エカシ(長老)は、「和人が来るまで昔は自由に獲れたものだ。しかし普段はホッチャレと呼ばれる、卵を産んで力尽きた鮭を食べた。新しい鮭が上がってくるときだけ、神様にお願いして獲らせてもらったものさ。獲りすぎると、鮭は戻ってこなくなるだろう。自然を大切にした民族の知恵だよ」と話す。行政はいまだに先住民の伝統文化儀式に使う鮭の捕獲を川で認めていない。
儀式が終わると、リムセ(輪踊り)やウポポ(座り歌)を楽しむ。今年は沖縄からのゲスト、高良勉さんと高峯久枝さんが琉球舞踊を披露してくれた。アイヌ舞踊を見学しながら、アイヌ民族伝統料理をいただいた。
まずは、鮭汁(チェプオハウ)。秋鮭とジャガイモ、ニンジン、大根、長ねぎなどの野菜のスープ。塩味仕立てで油がたっぷり入っている。かつてはアザラシ脂を使ったそうだが、今はサラダ油使用。これは三平汁の起源とも言われており、これに味噌を加えると石狩鍋。
脂たっぷりの口なおしにはイナキビご飯(メンクルッチサッスイェプ)。稲作がなかったので、キビが主体だったものの名残。
秋鮭を供える
鮭汁とイナキビごはん
最後にデザートとしてイモモチ(イモシト)。皮をむいてゆでたジャガイモをつぶし、これに片栗粉を加えてよく練りあげ、餅状にする。焦げ目がつくまで焼き、醤油やバターをたっぷりつけていただく。
リクエストに応えてアイヌのおばちゃんを
どの料理も北海道の伝統料理として、あるいは手軽なファーストフードとして親しまれているもの。北海道の脂たっぷりの料理には、厳しい冬を越すためのアイヌ民族の知恵がいっぱいつまっていたのだった。
アシリチェップノミで秋鮭のオイルエネルギーを吸収して、これで冬ごもり準備万端。と言いたいところだが、食べ過ぎにご注意。春がやってきたときに、脂肪のコートが脱げなくなっていて愕然とすることになる。