秋――
高い空に映える月を愛で、ほっこり温泉と旨いモノを楽しみたい季節。
すぐに雪で閉ざされる草津周辺は、もともとそば屋が充実し、今時は「採れると舞って喜ぶ」という舞たけがとれとれである。
スタッドレス不要の今のウチに、秋色アプリコットTantoで参上した。
草津へ向かう国道406号の道すがら、右手に「手打ち蕎麦」というのぼりがはたはたとひらめく。誘われるまま軽薄に脇道に入ると、「鬼屋」とのおどろおどろしい玄関が……手打ちになるのは私?と、『注文の多い料理店』的な気分で入店。ばあちゃんちに来たようなひなびた日本民家の座敷に、店主制作の絵画や焼き物が個性的に、でもスッキリと配置され落ち着く。
ここにはそば粉十割の生粉打ちそばと、二・八の田舎そばの二種類がある。私は生粉打ちそばで、温かいねぎ入りつゆに付けて食す「ねぎせいろ」と、かき揚げのセットをオーダー。かき揚げは粉状のヒマラヤ岩塩を付けて食す……超サクサクで具の旨みじゅわ! うまーい! そばの「ザ・穀物」な香ばしさとアゴを鍛える程度の歯ごたえは、ヤワでない食物の旨さを体感させ、ヒトとして食の感性を原点に戻させる。
鬼屋ねぎせいろ。つゆのダシ
とねぎの香ばしさが秀逸
鬼屋 営業時間11時30分〜(だいたい17:00ごろまで)
定休日 木・金曜日 電話027-340-5056
http://xp8r.com/oniya.html
さて、草津節が鳴り響く不思議な道路(草津メロディライン=時速40km遵守の優良ドライバーに限定)に誘われ、草津入山。白根山はすでに紅葉が始まり、草津湯畑の硫黄の緑も鮮やかである。草津市街にも約20件のそば屋があり、舞たけ天が一押しの店も多い。その一店、「そばきち 西の河原店」は、湯畑から西の河原(さいのかわら)公園へ行く土産物屋街の途中、目立つ位置にある。
こちらではまずそばの量とつけ汁の種類を選ぶ。温かいつけ汁には卵とじの湯の花汁、今の季節の舞たけ汁などがある。私はもりに冷たいつけ汁で、舞たけとなす・ピーマン・かぼちゃなどの天ぷらのセット、舞たけ天ざるそば1200円をチョイス。そばは製作者の誠実さがしっかりと伝わる優しい田舎風。つけ汁は少々濃いものの、出汁の香りがしっかり。
白根山ロープウェイ乗り場横の湿地帯。
木道があり、紅葉散策に最適
草津湯畑
待望の舞たけ天をつけ汁で食すと、さくふわとした穏やかな衣に、鮮烈な菌類エキスの香りが! 塩をもらって喰うとさらに堪能できる逸品。薫り高く、ほのかな苦みと旨みは、そばの香ばしさと絡まって日本郡部の味覚の誉れを感じさせる。
そばきち舞たけ天そばセット。
後ろの皿の一番上が舞たけ天
そばきち 西の河原店
営業時間11時〜品切次第終了
定休日 火曜日 電話0279-88-2256
http://www13.plala.or.jp/tomoeya/sobakichi/index.html
舞たけを堪能し、そばをたぐり、一杯引っかけたあと、中秋の月を見ながら草津市街に数カ所ある公共浴場(無料!)でph2〜1.5の強酸性の湯に浸かれば、身も心も溶けてほぐれる、粗野で美しい和の秋夜が楽しめる。