ネットビジネスの普及により、インターネットにアクセスできる環境であれば、世界中どこにいても仕事ができる時代になってきた今日、小型PCと携帯電話だけ持って世界中を旅する新しいタイプのノマド(遊牧民)が増えてきている。
23年前に日本を離れNYで生活していた私は、最近そんな21世紀型の自由なノマドたちと出会い、彼らのような新しい生活を始めることにした。
まずは、物価が安くて仕事がしやすい街に拠点を作ろうと、スェーデン人、アメリカ人の友達と夫の4人で、タイのバンコクにオフィス兼住まいを探すことにしたのだが、準備期間は生まれ故郷の長崎で過ごすことになった。
1ヶ月以上滞在するのは30年ぶりになる長崎市は、観光産業に力を入れているようで、見違えるほど綺麗になっていた。しかも、魚介類と野菜が安くて美味しいのには、驚いた。
実家の近くにある長崎市の新大工市場では、マンハッタンの高級寿司店で一切れ5ドルでも食べられないような新鮮で脂ののった鯵が、1匹198円!鯖よりも大きい丸々と太った鯵が289円!刺身用の新鮮なきびな(キビナゴ)が、30匹で100円! さらに、天然のぶりやひらす(ヒラマサ)なども刺身用の切り身が安く売られている。わかめやめかぶが、こんなに艶と弾力があるとは知らなかった。
さらに、野菜も新鮮で安くて美味しい。マンハッタンの高級スーパーマーケット「ホールフーズ」やオーガニックマーケットの高級野菜並みの美味しい野菜が、100円以下で店頭に並んでいるのだ。
30年前の日本の人参といえば、子供が嫌いな野菜の代名詞だったが、今の人参は、色・形がきれいで、生でも甘く美味しくなっている。こんなフルーツのような人参は、まだNYには出ていない。
マンハッタンには、世界中の食材が集まり、お金さえだせば、どんな料理でも食べられると思っていた私にとって、その何十分の一の値段で、何倍も美味しい魚介類や野菜が簡単に手に入る環境が、私の生まれ故郷にあったことを何十年もの歳月をかけて気づかされるとは思わなかった。
味噌、醤油など子供の頃から親しんできた故郷の味と、海外で同じ素材を食べた経験から再認識した味、そして農家の努力により改良されてきた味が融合して、故郷の料理は私にとって世界一美味しい料理に成長していた。
「牛肉はオーストラリア産が一番。」と豪語していたオーストラリア人プログラマーは、日本産牛肉のステーキに感動し、オーストリア生まれのデザイナーは、「世界一美味しいドイツパンを日本で食べるとは思わなかった。」と話している。
日本は、食いしん坊のノマドたちが集まる食文化大国なのかもしれない。