BIG UPコーナーにも登場したノブさんが、五反田にダイニングバーをオープンした。その名も「原価BAR」。入場料1500円ぽっきりで後は、店内のメニューは、フード・ドリンクともに原価で提供してくれる。それも問屋価格。これは、びっくり! 酒好きにはたまらない、拍手喝采で迎えたい新スタイルだ。
原価BARはJR五反田駅西口を出て右に歩くことたった30秒。入り口で1500円を支払う。普通のバーでも500〜800円のチャージがかかるので、特に抵抗はない。フード&ドリンクはカウンターでキャッシュオンで注文する。
原価を謳うだけあり、メニューは笑えた。「竹鶴12年」が120円、「山崎10年」が180円と激安。シングルモルトの「ザ・マッカラン12年」が180円、「I.W. Harper」が90円。極めつけは、ブレンデッドスコッチの「ベンネヴィス」が60円! 信じられない価格だ。ジンやウォッカ、ラムなども60円からあり、高級酒の「ヘネシー X.O.」でさえ、600円という衝撃。周りの客はというと、皆ジャラジャラと小銭を開いた灰皿へプールしている。
1パイント420円のドラフトギネスをチェイサーに、おなじみのアイラウィスキーを頼もうかと思いきや、別紙の「スペシャルメニュー」が目に飛び込む。
シングルモルト余市1990?!!
余市はニッカのシングルモルトウィスキーで、熟成感のある個性的な味わいが特徴。筆者も大好きなのだが、このボトルは観たことがない。「シングルモルト余市1990」は、90年に蒸留し、樽詰めされたモルトで、20年間の長期熟成が行なわれている。アルコール度数は50度とやや高め。
しかも価格は驚愕の810円!!!
ここで、嫌らしい話だが、価格をチェックしてみよう。オンラインショップでの「シングルモルト余市1990」の価格は2万1000円。容量は700mlで、原価バーは30ml取りということを計算すると、1杯の原価は900円オーバー。問屋価格がネット価格よりも安いと言うことなのだろうが、間違いなく原価だ。普通のバーで頼んだら、2500〜3000円はしそうな感じ。1杯で軽く入場料の元が取れる。
カウンターで余市1990を受け取って、着席。はやる心を抑えつつ、ドラフトギネスで口をしめらす。落ち着いたら、琥珀色の液体が波打つテイスティンググラスを口元へ。普通の余市はパワフルな芳香だが、こちらはフルーティ。微かに磯の香りも漂う。さすが、20年熟成で、角が落ちたらしい。
グラスを傾ける。ウッディな味わいが広がり、しっとりと染み渡る。アルコール度数は50度あるとは思えないくらい、落ち着いた味。絶妙なブレンドのバランスが醸し出す完成度を堪能する。香りの第1印象と同様、華やかな感じ。フィニッシュは抑え気味のピートの余韻を楽しむ。すばらしい。
2008年、「余市1987」はワールド・ウィスキー・アワードにて、世界最優秀賞を受賞。すでに販売が終了しているが、「余市1990」も同じ20年熟成。負けてはいない。
30mlと標準量だったので、すぐにグラスが空になった。原価なので気軽におかわり。軽い足取りでカウンターへ向かった。
【原価バー】
住所:〒141-0031 東京都品川区西五反田2-5-8 野津ビル2階
TEL:03-6417-9909