離れてから気付くこと――「青春」との再会

「青春」という言葉を聞いて、どんな気持ちになりますか? なんとなく気恥ずかしいような、くすぐったいような。
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どんな「青春」を思い出しますか?
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この開放的な海!
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さんさんと降り注ぐ太陽
伊豆の地を歩くと、ここが多くの「青春」小説の舞台であることに納得できる。明るく開放的で素朴。さんさんと降り注ぐ太陽が海に反射する様子は、そのまま「青春」っぽいのだ。そんな伊豆の風土が、多くの作家の創造力を刺激してきたに違いない。

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海の幸朝ごはんに満足
最初に思い浮かべるのは、やっぱり川端康成の『伊豆の踊子』。題名からすでに、なんだか甘酸っぱい香りがする。井上靖『しろばんば』からも素朴さが漂ってくるようだ。

でも「青春」ってホントに素朴だったっけ? 確かに青春っていうと、さわやかとか繊細さを思い浮かべる。でも、それだけじゃない、傷つきやすくて、脆くて、でも、だからこそ残酷さもきっとあった。

太宰治や梶井基次郎も、伊豆の地を好み、また伊豆の風土から閃きを得て作品を残している。ほら、この作家の名前を聞くだけで、なんとなくほろ苦さ感が伝わってきませんか? 太宰の『ロマネスク』には伊豆が登場し、『斜陽』の一部は伊豆三島で執筆された。梶井も病気療養のため伊豆湯ヶ島温泉に滞在し、『冬の蠅』を書いた。

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修善寺の階段をのぼると
吉本ばなな原作の市川準監督『つぐみ』を見て、なんだか納得した。西伊豆の小さな港街。つぐみ(牧瀬里穂)は、身体が弱かったために、小さな頃から甘やかされて育ち、わがままな性格になった18歳の少女。病弱なつぐみは、とにかく残酷なのである。かなりイジワルで性格が悪いのだ。つぐみのいとこ、まりあ(中島朋子)が言う。

「つぐみは、意地悪で、粗野で、口が悪く、わがままで、甘ったれで、ずる賢い。人のいちばん嫌がることを絶妙なタイミングと的確な描写でずけずけと言うさまは、まるで悪魔のようだった」

これって、「青春」そのものじゃないか? それでも、周囲の人々はつぐみに強く心惹かれ、優しく見守る。

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繊細な「青春」? それともほろ苦い「青春」?
まりあが伊豆に別れを告げる日、こんな言葉を思い浮かべる。
「春が近づき、日ごとに温かくなり、いざそこを離れるとなると、なんでもない見慣れた日常の光景が、にじむような明るさで、くっきりと胸に迫って見えた」

青春を振り返るのって、なんだかほろ苦くて気恥ずかしい。でも、たまにはいつもと違う土地で感傷ぶってみるのも悪くない。離れてみてわかることもあるのだ、きっと。