タンゴ音楽に欠かせないのが
この"バンドネオン"楽器人生を変える出会いってそんなにあるもんじゃないですね。
でもありましたね。
この街に住もうという直感に“バックアップ”を与えてくれた衝撃な出会いが……。私にとってのそれが、何を隠そうタンゴだったのです。
ブエノスアイレスの8月は“Agosto es Tango(8月はタンゴ)”と、街のいたるところに掲げられるようにタンゴの月。詳細は昨年のタンゴフェスティバルの記事に譲るとして(http://asobist.samplej.net/tokushu/tokushu-2/0908025.php)、今年も8月13日から31日まで過去最高の19日間開催されたタンゴ世界選手権・タンゴフェスティバル、実に盛り上がりましたよ。
昨年までとの大きな違いは、昨年アルゼンチンとウルグアイのタンゴがユネスコの無形文化遺産に登録されたこと。それもあり毎年恒例のオーケストラコンサート、タンゴショー、コンフェレンス、タンゴレッスンなどに加えて、“子供も楽しめるタンゴ”が意識され、週末にはTango Para Niños(子供のためのタンゴ)と称してタンゴ音楽に合わせてアニメーションを見せたり、タンゴの歌詞を子供向けにアレンジし直した演出が数多くなされていたことなどでした。
タンゴ世界大会の決勝シーン
日本勢の活躍は今年もすごかったです!
世界18カ国から405組のカップルが参加しました。タンゴを夢中になって踊っていた時期、“パウサ(一時休止。何もしない休止の状態)を楽しめるようになったら、本当にタンゴを踊っているといえるのよ”と言われたことがあるんですね。タンゴって踊れるようになるにつれて、ガンチョ(女性の足を男性の足に引っ掛ける技)をしたりボレオ(ももは固定したまま風を切る様に膝から下の片足部分をすばやく蹴り上げて下ろす足技)をしたり、と何かと映える技を駆使したくなるのですが、パウサつまり“立ち止まる”ことを楽しめるようになったときに“タンゴの核”をつかんだといえるのよ、と。
連日に渡りタンゴファンが押し寄せ
期間中のべ35万人が足を運んだとか。個人的な話をすれば、今回のタンゴフェスティバルは、私にとっては「産後、自分の“道楽”でこんなに外出が続いたの、初めてだわ」という目新しい期間となったのですが、タンゴが毎日の生活の中に自分の時間を持つ大切さを強調してくれる呼び水となりました。それは、日常へのパウサを意味し、クエルポ(体)とメンテ(神経)をタンゴ音楽にゆだねることで見えたことがあった、そう、そこで対峙していたものは、過去の自分と現在の自分、そして未来の自分……、タンゴを通して改めて出会ったものはいちばん疎遠になっていた自分自身でした。パウサすることで見えるタンゴの核はやはり「自分」なんですね。またもやタンゴによって究極の出会いを得ましたよ。
フォーエバー・タンゴ、です。