和気の藤公園は“藤の花咲く郷”といわれるとおり、その昔、藤野の地は藤が咲き乱れる原野であったそうだ。現在は7000m²の敷地に、総面積3600m²の藤棚。北は函館、南は鹿児島の藤。国外から中国と韓国の藤を加えて約100種類の藤が見られるという。いよいよ見頃もラストチャンスらしく、「藤まつり」の開催を目当てに、ETCによる高速料金値下げにも乗じての遠出だ。
車道には、野に咲く藤もちらほらと。紫の藤は凛としながらもまるで、日本髪の女性のうなじのように、ちょっと妖艶。公園までの道すがら、ヨモギ餅や地元の野菜や漬物、紫色のソフトクリーム「藤クリーム」の出店が並び、来訪する客の財布のヒモをゆるませている。
なんとも幻想的な日本女性に藤の紫
紫の花に包まれたい気持ちがここへ私を呼んだのか。辿りついた公園の藤棚に「うわっ」と声ともいえない愚音が出た。見事!
藤棚の下から空を見上げると、それは不思議な紫色のたわわな藤の花の光景が、甘くてちょっとすっぱい花の香りとともに3Dで迫る。桜の花とは違った控えめさだが、下に伸びる隙間もない紫やうす紫、ピンクの花々。その華やかさが大人の華麗さをかもし出している。藤棚の下では、大人も子供も高揚して、歓喜の声を上げる。
「お母さん、これ本物の花ぁ??」
すべて本物の藤でできた藤棚が初夏のお日様の日差しと解け合っている。ここで帽子を脱いでひと休み。贅沢な空間だ。
天気にもよるが、2週間程度の見頃しかないこの花の下は、もう異次元空間である。着物を着た女性が舞いを踊っていて、まるで花札の図柄のような光景があった。(今年の開催は4月25日〜5月8日※5月9日からは無料開放)
もちきびのソフトクリーム
にそば。ごちそうさま
もう紫で“おなかいっぱい”のなか、次は兵庫県の大歳神社へ。ここは、周囲2.8mの根と枝配の面積420m²、樹齢1000年の千年藤がある。
ここも思わず「うあっ」と。
紫の空の下にいるというのは、オツなもの。ここの藤は東京・銀座の歌舞伎座の舞台幕の堂々たるモデルとなって人々を楽しませている。この藤を目当てにツアーも来るほどで、ここも毎年「藤まつり」を開催している。(今年は5月3〜6日)
旅の帰りには、前から行きたかった「もちきび館」にも。ここは、もちきびを素材とした食べ物を味わい、お土産として買っていくことができる。もちきびのソフトクリームはコクがあって、ほんとに美味しい。もちきびの麺も文字通りもちもち。さらに、もちきび煎餅、もちきびかりんとう……。変ったところでは、イタリアのクリスマスケーキのもちきび版「もちきびパネトーネ」なんかもあり、試食しまくる。すべてが美味!
「花より団子」しかり「藤よりもちきび」というところか。なかなか大人にはなりきれない自覚をもって、またまたお得なETC割引で帰路に付いたのだった。