「これはこういうもんなんだ!!!」という固定観念をそう簡単に捨てきれないのは、万国共通……世の常人の常ではないでしょうか。
そんな自分の思い込みに気づく機会が多くなるのが、海外生活。食いしん坊の私の場合、特に食生活で気づくことが多かったように思います……英国スコットランドにあるフィンドホーンというコミュニティで暮らしていたときの朝食。
ここでの朝食は、コミュニティ生活を体験しに世界各国から訪れたゲストや、当時の私のようにコミュニティで生活している人が、大きなダイニングルームで、各自の好みで選ぶビュッフェスタイル。主食としてシリアルやトーストの他に、スコットランドの伝統食である「ポリッジ」も毎朝用意されていました。オーツ麦を水またはミルクで煮込んだ、とてもシンプルな一品なのですが……その食べ方に……お国柄がわかる食習慣が現れてしまうのです。
ポリッジの材料となる「オーツ麦」。
アメリカでは「オートミール」の名で親しまれており、日本では「からす麦」、食品成分表では「燕麦」と表記されています。鍋いっぱいに用意されたポリッジは、朝食終了時間間際には鍋の底が見えてしまう人気メニュー。みなさま、器によそったポリッジにバナナやりんご、レーズンやプルーン、デーツ(なつめやし)をトッピングして、美味しいそうにいただいております。そこに、登場する日本人。ポリッジに半熟ゆで卵を載せ、スプーンで卵を崩しながら、しょう油なんぞを加え、混ぜ混ぜ。
英語でいうところの「セイボリーポリッジ」を完成させ、さぁ〜「いただきます!」。
シリアル感覚で、ミルクを加え、果物やドライフルーツを入れて……
これぞスコットランド伝統の朝食!「正統派ポリッジ」日本人にとっては幸いにして(!?)ミルクではなく、水で煮込むポリッジなので、このようなバリエーションが可能なわけです。長期滞在中の日本人は、ポリッジをさらに日本の伝統食へと進化させます。乾燥わかめ、ゴマ、とろろ昆布などの乾物を投入したり、缶詰の鮭や真空パックで売られているスモークドマカレル(鯖の燻製)を混ぜ混ぜしたり…隣り合わせになったヨーロピアン、アメリカンたちが口をあんぐりと開けて、その極めてジャパニーズなセイボリーポリッジ作りの現場を眺めることもしばしば。そして、その極みとも言える一品(逸品?)が、日本人ゲストからいただいた貴重な納豆をネバネバ混ぜ混ぜしていただく「納豆ポリッジ」♪ これには、その匂いのせいで、さすがに露骨に嫌な顔をされますが……。
糸引く納豆の姿にご満悦の日本人を呆れ顔で眺める西洋人という朝食風景。これもグローバル化による固定観念の払拭に一役買うチャンス到来ととらえるべきか……。
幾多の西洋人を"ぎょっ"とさせてきた、これぞ究極の日本版!「納豆ポリッジ」ちなみに、「甘いか? しょっぱいか?」という食習慣の違いの話でいけば……西洋人にとって、甘い豆、すなわち「あんこ」も、口にした瞬間に「ぎょっ!」とする一品。そして、この甘党の私が……日本人としてどうしても固定観念が邪魔して受け入れなれなかったのが、ライスプディング(「お米」を砂糖とミルクで煮て作るスイーツ)。
このプディング用のお米。日本米にはかないませんが、外国米の中では粘りがあり、酢飯を作って、海苔巻きやら手巻き寿司なんか作ったもんだったなぁ……あぁ、やっぱり、「住めば都」でも、慣れ親しんだ食生活はそう簡単には変えられないもんです。