写真中央辺り、左足元に小さな雪面を持った、これも小さな三角の頂がヤラピークだ。
画像を撮っているここベースキャンプYalaKharka4750mからかなりの距離、無雪山道を登る。氷河の端ににたどり着いたら、雪斜面を登りつめれば山頂。標高差770m、「いけそーじゃん!」「登れない距離ではないよな」と思えるではないか。
11月4日
02:00起床、03:00出発。
歩き始めていくらも経たないうちに4750mからそれ以上を目指して歩く、ということの厳しさに打ちのめされる。とんでもなく身体が重い。呼吸が苦しい。さほど気温が低いとも思えないのに手足など、末端が冷える。ついに手指の先が痛くなってくる。
小休憩のころには手指は耐え難いほど痛く感じるようになり、グローブの上から手指をパンパンはたいたりするのだが、何の役にも立たない。もう、泣きたいぐらい痛い
「何してるの?」
「指先が痛くて」
「痛くなるまで我慢しちゃダメでしょ、グローブ代えて」
体感気温がさほどではないので薄手のウール手袋の上に軽い防水手袋をしていたのが、いけなかった。さほど寒いと感じなくても、しっかり冬山装備をするほどには気温は下がっているのだ。高所で、ただでさえ血中酸素濃度が落ち込んでいるところへ、登る行動すると、ますますSPO2は落ち、感知した脳は命を守るために末端から見捨てていくのだと本郷さんから聞いた。
グローブをザックから出そうとするのだが、あまりにも手がかじかんで、一向に埒が明かず、いたずらにグズグズするばかり。現地ガイドのシェルパ頭のオンチュが飛んできて、している手袋の上からぶ厚いミトンをはめてくれた。
ミトンをはめたとたん手指に体温が溜まっていく感じで、楽になった。
真っ暗な中を歩く。延々と登りが続く。さほどのスピードではないのに辛い。鉛のように足は重く、胸は恐ろしい勢いでバコバコと音を立て、呼吸は深呼吸するゆとりさえないほど浅く苦しい。だんだん、どこをどう歩いているのかわからなくなる。ゆらゆらと身体を揺らしながら、ただただ歩く。
と突然広々した台地に出た。先に行った人たちが待っていてくれるのが見える。ようやく、わずかにゆとりが生まれ、来た道を振り返った。
気がつけば夜が明けようとしていた。山並みは目に染みるほど青々と気高く、その上に広がる空はまるで三層に塗り分けたようだ。山端近くはほんの一筋、白々と明るみ、そのすぐ上には、絹布を横に流したようなひと幅の薄紅色の層が好天の一日の始まりを告げている。そしてそのさらにまた上空は青い山並みよりなお濃い碧い空が高く、高く、どこまでも広がっている。
ああ、なんて山!なんて空!!
「何、泣いてんの?!」
「だって、きれいなんだもん」
あまりにもの美しさに胸が熱くなった。もう涙が止まらなくなって、しまいに大泣きした。
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