ところでみなさん、最近スタジアムへ野球観戦に足を運ばれたことはありますか。あるいは「昔はよく行ったけど最近はねぇ」とか「野球はあまり興味ないです」なんて方もいらっしゃいますか。
まぁ「野球とか興味ないし」なんて方も居酒屋の傍らでチラ見、あるいは伴侶・友人がテレビ観戦するのにつき合ったことくらいはあるでしょう。
「野球なんて生も中継も一切見たことない」、という方は少ないんじゃないか、という前提で今回は書きます。とはいえ「野球というスポーツ云々」に関しての言及はあまりないので興味のない向きも安心してお読みください。
まず先日、ファン仲間と4人で東京ドームへ観戦に行ったとお考えいただきたい。
いや、行ったんです。ここ数年、この時期あまり調子はよくないのに、どういう風の吹き回しか今年は最初に少々ズッコケたものの、そこそこ勝つことができてきた阪神戦の観戦です。しかも人生初めてのレフトスタンド。外野手・マートン選手の背を見ながらの応援でした。
え〜、野球にご興味のない向きへ書き添えておきますが、レフトスタンドはビジター・チームの応援席。しかも内野席と比べるとわりと「激しい方」にあたります。念のためちょっと図でも説明しておきましょう。
チケット代は「ホームベースに近いほど高い」でおおむね合ってますこの丸印辺りに座っての応援。初めてのことで知らなかったけれど、外野スタンドでは攻撃中は全員起立、立ち上がって声援を送ることになりました。
ところで以前「名前の行方」の回でも書きましたけど、試合中は「お酒を飲まない」主義の僕。手にカップやつまみを持つことがないので立ったり座ったりの応援も苦にはならないけれどどうにもせわしない。
本来はじっくり観戦するのが好きなので、忙しい観戦で終了するころにはやや疲れぎみに(笑)。とはいえ試合は首尾よく勝ったのでそれもいい経験で、いずれにせよ外野スタンドでの観戦にはそれ相応の準備が必要とわかって勉強にもなりました。
というのも野球場の客席は内・外野を問わず何せ席が狭くて荷物を置くスペースがない。内野席なら得点が入ったときでもない限り立ったり座ったりはしないので、荷物を膝に置いて観戦できるけれど、外野はその限りでない。
いきおい荷物を椅子の下などに置くことになるわけで、ここに野球場独特の問題があって「後ろの席の人がビールを床にこぼす」なんてことがあるんですね。ひんぱんに。ほらそんな時、椅子の下に荷物を置いていると受難に至る……というわけ。そこで。
さすがですねぇ。外野観戦になれていると思しきまわりの方々は全員「ビニールのゴミ袋」持参、着くやいなや財布とカメラのみを手に、上着と鞄をその中に入れての観戦開始です。なるほどねぇ。次回はゴミ袋持参。了解。
さて今回の本題はそこでない。スタジアムのアナウンスであります。アナウンス、と言ったら語弊がありますね。むしろDJと言った方がイイ。
そう、テレビ観戦しかされたことのない方はご存じないかもしれませんがDJ、いるんですよ。球場に。
今回は「ピーマンの煮浸し」を。
そういや昔「話の中身がないこと」を、
「話がピーマン」とか言ったことありましたね
たとえばホーム・チーム1点ビハインドで7回裏に入る。
民放テレビならコマーシャル、あるいは公共放送なら音を絞って解説者との会話やそれまでの経過をVTRでたどったりするので放送されないはずの攻守交代時の球場音。
そんなとき客席で聞こえてくるのは、フィールドのファウルエリアに躍り出たチアーが脚を上下させるズンドコBGMにのせて、
「さ〜あ、1点を追っての攻撃は4番○○からの好打順!
ここのところ調子のいい打撃陣に期待しながら応援しよう!
GO! GO! ●●●●!」
と言った具合の叫び声なんでありますよ。
あえて選手やチームの名前を伏せ字にしたのはこれがドームに限ったことじゃなくて神宮球場でも横浜スタジアムでも(そしておそらく僕が未体験の甲子園球場でも)行なわれているであろうことだからで、これを聞くといつもやるせない気持ちになるんですね。
もうねぇ。これまでハラハラしたり盛り上がったりしながら一球に一喜一憂してきた気分がぶちこわし。ガッカリですよ。
僕は特にアメリカ野球を標榜するものではないけれど、かの国では「7thイニングストレッチ」と言って例のオルガンで演奏される「野球場へ連れてって(Take Me Out To The Ballgame)」をせいぜい唄いたい人だけが立ち上がって唄うくらいなんでしょう?
あれに比べるとなんだか子供じみてて、なんだかバカにされてるような気がしちゃうんですよね。
これだけじゃなくて、攻守交代でビジター・チームが攻撃にはいるときなどは普通に「TVCM」に準じたものがスコアボードの方に据え付けられた巨大画面に映し出されることもあって、そんな時には「野球場という日常とはちょっと離れた異空間(と言っていいと思う)」にいるはずの感覚が一気に現実に引き戻されたような気持ちになるわけであります。
誰が考え出して始めたんだろう。いずれどこぞの広告代理店だとは思います。まぁ百歩譲ってCMは球団が「広告収入」を得るための経営的手段だと思ってがまんしてもいい(本当はイヤだけど)。
でもあのDJはいただけない。ゲーム中にどうして鳴らすのか、意味不明のジングルのようなSE(行くとわかります)も含めてできればやめてほしい、とここ数年思っています。
本音を言うと、僕はシーズンオフにバラエティ番組(!)やお笑い関係の芸人さんが
野球選手をネタ扱いにしてふざけたアトラクションに引っ張り出すのも好きじゃない。
それは僕が「プロ野球選手は選ばれた異能の人々である」という、ある種「敬意」のようなものを抱いているからで、中には「テレビに出たい、退団後はタレントになりたい」という人もいるのかもしれないけれどそれは引退後にしてもらって、僕のように「野球
選手がお茶にされている」のを見ているとなんだか切なくて辛くなるタイプの人間がいると言うことも知っていてほしい、と思うのであります。
これはアレですね。その昔「スター」と呼ばれていた類の人たちがいつか「隣のお兄さん、お姉さん」という存在になって以来、なんだか「オーラ」のようなものを失ってしまったのと似ていますね。
まぁ彼らはただの「ボールを投げたり打ったりするのが普通の人より巧い人たち」に、そうそう簡単にはならないとは思うけれど、それなりの矜持やプライドを持ち続けてほしい、そしてその環境をまわりでも作ってあげてほしい、と思うのは野球好きからのささやかな願いです。
とはいえそんなことも忘れて試合終了後はお決まりの祝杯。球場近くのパブへ繰り出してビールとフライドポテトで完敗……じゃなくて乾杯。勝ったからね。なんにせよ勝てば気分がいいもんです。
あれぁどういうわけだか野球の勝ち試合にはやっぱりビールが似合うわけで、負け試合で「燗酒で目刺し」みたいな気分になったときには「ああやっぱりそのあたり『ベースボール』と『野球』は違う」ってことなんでしょうかね。
そんな「ビールとフライドポテト」だけでハンチクなおなかを抱えて帰ったあとはシャワーを浴びて、作り置きしてあった「ピーマンの煮浸し」でぬる燗。
これ、作るのに時間はかかるけれども手間いらず。なにせピーマンを丸ごと何もせずに煮るだけの料理ですからね。冷めてもおいしいので多めに作り置きしておくと重宝です。
てなわけで眠そうな妻を横目に、勝利の美酒と言わばイエ〜イ! と幸せな気持ちで蒲団に入った夜のお話。めでたしめでたし。
次回更新は6月4日の予定です。て、うわ、もう6月か。早いですねえ。
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