純国産、全長50mのHIIロケット7年間、60億kmにも及ぶ旅を終えた「はやぶさ」の快挙は、記憶に新しい。満身創痍ながらも見事にミッションを終えた逸話と、それを支えた関係者の努力に胸を熱くした人は多いと思う。その「はやぶさ」を開発した宇宙航空研究開発機構:通称JAXAの特別公開にお邪魔した。
筑波宇宙センターで早速出合ったのは、来年よりISS(国際宇宙ステーション)に長期滞在する、古川聡宇宙飛行士である。宇宙での任務の話はもちろんのこと、地球に帰還する際に不時着したという想定で、マイナス20度のロシアで過酷なサバイバル訓練を行なった、という話には驚かされた。
また無重力下で行なわれた植物の発芽実験の話に関連して、船内で食料を生産し将来的にさらに遠い宇宙に行けるようになるかもしれない、と語ったのが印象に残っている。ふと、遠い未来に宇宙で暮らす人類の姿が脳裏に浮かんだ。
エコ!? 実は
マジックテープで貼ってあるんです
宙に浮かぶISS
(宇宙ステーション)モデル
宇宙飛行士養成棟また昼夜は温度差が200度にもなる宇宙環境から、機体を守るサーマルブランケットが厚さたった0.02mm。宇宙では風が吹かないことから、マジックテープで機体に張られているそうだ。最先端の技術と一般の技術を組み合わせ、コスト的にも優れている物を作り出すところが面白い。
最近「こうのとり」と命名された、HTV(宇宙ステーション補給機)についての講演も素晴らしかった。食料品や機材といった大事な物をISSに届ける「こうのとり」は、実は凄い状況下で物資の受け渡しを行う。 地球から400km上空を約90分。約8km/秒 (マッハ25) の猛スピードで移動するISSにぴったりと寄り添い、物資を届けた後はISSの不用品を積み、大気圏に投下され任務を終える。性質こそ違えど、「はやぶさに」負けず劣らずの活躍っぷりである。HTVを利用した補給活動は現在、日本が担っているとのことで、日本の宇宙開発技術は素晴らしいんだ、と誇らしい気分で同センターを後にした。
スペースシャトル用フライトスーツ
閉鎖環境適応訓練設備
ここで隔離訓練を行なう地球から遠く離れた空の彼方で活躍する人と、それを支える人がいる。
昔SF小説で読んだ話は夢物語ではなく、将来実現するかもしれない。今すぐには無理だとしてもJAXAの絶え間ない努力は、未来に受け継がれて行くに違いない、という確信に出会えた一日だった。
また、特別公開前に訪れた丸の内のJAXAi(2010年12月に閉館予定)、筑波宇宙センターの方達は大変親切で、質問にもわかりやすく、真摯に答えていただいたことに感謝したい。技術だけでなく人間力も高かったです、JAXA。