投稿者: asobist.com

そうめん弁当と「魔王」

中学校に入学したばかりの頃、私の斜め前の席に座っていた男の子。大きな目とやや尖り気味の口元が可愛らしいが、注目を集めそうなタイプではない。小学生の頃から"ボケ"と仇名される、どこか飄々とした雰囲気の持...

孤高の人 上下

「解説」を読むまでもなく、実在の人物がモデルであろうことは、作品を読み出せばすぐに察せられる。昭和初期に登山家として名を馳せた加藤文太郎が実名で登場する。 無口で人付き合いが苦手、並外れて山足の速...

vol.27:田川 律ちょい悪オヤジの炊事ライブ

「男子厨房に入る」と銘打つ、いわゆる“男の料理”に胡散臭さを感じてきた。 吟味された食材でじっくり時間をかけて調理して、盛りつけの彩りもよく…。でも、片づけ...

銀嶺の人

紛れもない「山女」の話である。岩壁を自在に駆け、銀嶺にスクッと立つ美しい雌カモシカ。あまりにもの清清しさに雄カモシカでさえ、その角を下ろす。 クライミング史上に足跡を記した実在の人物がモデルと聞け...

フランシスコの2人の息子

ミュージシャンという仕事で大成するのは並大抵のことではない。それは日本の真裏に位置するブラジルでも同じことだ。 音楽を心の支えに生きる父、フランシスコは、息子たちをプロのミュージシャンにするため、なけ...

ジャングルジムのてっぺんで

ジャングルジムが好きだった。幼稚園の砂場の横にある、くすんだ銀色のジャングルジム。ひょいひょいとてっぺんまで昇っていって、ちょこんと腰掛け、ひとりきりで空を仰ぐ。きもちいい。もちろん園庭にもジャングル...

栄光の岩壁

「山岳小説」であり「冒険小説」「青春小説」であり、ちょびっと恋愛小説かな? なんともチャーミングな作品。ひきつけられて一気に読んでしまう。 背景を「山岳」に求めたという生半可を越え、山々はあくまで...

氷壁

厳冬の北アルプス北穂高、前穂高、奥穂高岳登攀の描写は著者もまた相当の「山屋」ということを言わずもがなで語っている。恐ろしく「山岳小説」であり、幾分やっかいでしんきくさい「恋愛小説」であったりもする。...

輝ける女たち

★カトリーヌ・ドヌーヴ10年ぶりの来日決定! 最新作はフランス映画祭2007 オープニング作品 カトリーヌ・ドヌーヴ、というと、「シェルブールの雨傘(1964)」や、「昼顔(1967)」での可憐な...

心にナイフをしのばせて

事故でもなく疾病でもない。いわれなき犯罪によって肉親を失った家族のグリーフワークは家族のその後の人生を変えてしまうほどに困難を極める。メディアの餌食にならざるを得なかった心傷も想像を超えて深い。外側...

パフューム -ある人殺しの物語-

衝撃にも何種類かある。アクションもののように、画像の中の人やモノのアクティブな動き自体が衝撃的なもの。スプラッタのように、生理的嫌悪感が衝撃を与えるもの。そして本作はといえば、ストーリーそのものが観客...

vol.26:大谷高子平和を見つめる沖縄の語りべ

第二次世界大戦中、日本国内でただひとつ地上戦が行われた沖縄本島南部には、「ガマ」と呼ばれる自然洞窟がいくつもある。日本軍と住民の避難壕として使われたガマの中では、さまざまな悲劇がくり返されたという。平...

華麗なる恋の舞台で

映画というものは、現実逃避の道具でもある。日常の様々なしがらみから逃れ、別世界へと心を解き放つ。現実からかけ離れたSFもいいが、現実に即し、尚且つ少しだけ浮世離れしているくらいが効果的なこともある。 ...

あなたになら言える秘密のこと

たとえ辛い過去があっても、たった一人の大切な人がいるだけで生きていける。そんな珠玉のメッセージがこめられているのが本作だ。 心がなくなってしまったかのように、友だちも作らず趣味もなく、機械のように日...

それでもボクはやってない

『Shall we ダンス?』の周防監督が日本の刑事裁判制度の問題点を浮き彫りにさせる社会派ヒューマン・ドラマの登場だ。 就職活動中の主人公は面接へ向かう途中、電車の中で痴漢に間違われて現行犯逮捕され...

富士山頂

表題から想像してかかると肩すかしを食らう。富士登山の話ではない。富士山頂に「測候レーダードーム」を建設するという難事業の成るまで。実際に昭和39年に竣工された実話を元に、その上著者が当事者でもあった...

縦走路

誰がメインキャストで、何のお話なのか?惑わされてはいけません。あくまでも表題「縦走路」をお忘れなきよう。 2月・厳冬の「八ヶ岳縦走」。紛れもない冬山を「ヤル」ということのなんたるか。厳しくも美しく、...

アラスカ物語

「あっさり」に過ぎるのでは、と思える文体だが、少し読み続ければそのなぞは解ける。 過度な表現を抑え、綿密な取材で足跡を追いながら、事実を超えた人の真実を伝えるに必要最小限が著者の視線で語られる時、読...

長州ファイブ

「愛国心」という言葉は、日本ではどうも馴染みが薄い。ともすると戦争の記憶と結び付けてしまい、ネガティブな言葉と印象付けてしまう御仁もいるだろうし、愛国心教育の是非の論争も記憶に新しいところだ。 幕...

ピンチクリフ・グランプリ

最初に宣言しておきます。この「ピンチクリフ・グランプリ」(原題:The Fla(*aの上に○)klypa Grand Prix)ものすごくヒイキします(笑)。正直ホメまくりです。だって本当にいい映画な...