平成元年に30歳を迎えた層。すなわち団塊の世代のひと世代あとに該当する向きには、読み出せば、たちまちに懐かしさにつまされよう。
18、19歳で地方から上京、なんてことならなおさら、いちいちうなづいているうちに主人公と同化してしまうのは間違いない。
特にドラマチックなわけでもなく、明確なストーリーが提示されるわけでもないが、その時代の若者層が如何にして時の流れに浮揚して生き延びていったかを見事に広げて見せてくれる。
世代とはおかしなもので、5年も違えば天地がひっくり返るほど模様が様変わりしたりする。
団塊の世代が繰り広げた「お祭り」騒ぎの、無残に崩れて落ちた夢の残骸を見てもウンザリともせず、「冷静沈着」を装った「無感動・無気力」などそしられもした世代の代弁者は「どっこい、そうでもないわい!」と訴えかける。
さて、それからまた月日は流れ、平成20年に30歳を迎える層は、本作の世代の生き様をどう受け取るのだろうか?
なに、説教がましいことを言おうなんてんじゃない。
ただ…
30台の「若者」が20台の「若者」を指して「今頃のワカイもんは!」など嘆くのを聞くと、思わず「ふ」と微笑んでしまう。
そーねー、歳はとりたくないもんです。
作者名:奥田 英朗
ジャンル:小説
出版:集英社文庫