土に埋まる黒き香しきお宝、トリュフの季節がやって来た


090116_01.jpg
左が土の付いたトリュフ。右が土を洗った状態。
冷凍保存が可能だ。

日中、お日様が顔を出していても吐く息がくっきりと白くなり、朝夕の冷え込みがぎゅっと厳しくなって来たら「実りの秋」もそろそろ終わり。そんな時期に収穫シーズンが始まるキノコがある。

フォアグラ、キャビアと並んで「世界の3大珍味」とされるトリュフというキノコはフランスの西南部、ドルドーニュ地方の名産物。初霜が降りたらシーズン開始の合図だ。収穫と言っても誰にでも採れる代物ではない。なんせ土に埋まっていてその姿は見えないのだから。では何を頼りに探し当てるのかと言えば、その「香り」。


090116_02.jpg
古葉書より。昔は豚を使って探していたトリュフ。

一昔前は食いしん坊で嗅覚の優れた豚を連れて探し当てていたが、豚の困ったところは見つけた瞬間に掘り出して取り上げないとこの「お宝」をガツガツと食べてしまうこと。
最近では訓練された犬を使って「ココ掘れワンワン」方式で探すのが主流だ。他には真冬なのにハエが土の上を巡回していたらそれが目印になる。

人間の力だけでは見つけられないブツと言うことか?

ともあれ高級食材の位置づけで「皮だけ」や「水煮にした汁だけ」などにも堂々と高いお値段がついて売っている。地方名産物を扱うお店や、高級食材店では水煮や缶詰にしたものが年間を通して手に入るが、フレッシュなものが手に入るのはやはり冬。

観光客で溢れる夏に比べてゆったりとした感じの冬の市場に出かけると、お肉屋さんにはご丁寧に頭も羽も付いたままの鴨さんや雉さんがぶら下がり、魚屋さんにはホタテ貝やオマール海老が美しく並び、果物屋さんにはライチなどのエキゾチックフルーツがお目見えして華やかな冬のパーティ気分が全開だ。

そんな中、幅1mにも満たない小さな折りたたみテーブルの上に電子秤とゴルフボール大から握りこぶし大の黒い塊数個のみを置いている地味なオジさん。この人こそが「トリュフ売り」だ。お値段を聞くと1キロ500ユーロ。ゴルフボール大1つで20ユーロになる。「トリュフ祭り」など観光客が集まるような場所では1キロ800ユーロだ。


090116_05.jpg
オムレツを作る前の数日間、卵とトリュフを
一緒にタッパーなどの密閉容器に入れておくと
それだけで香りが移る。

オジさんの勧める「味わい方」はトリュフの切断面をカリッと焼いたパンに擦りつけバターを塗って食べると言うシンプルなもの。その他、オムレツやソースなどに使われる。味そのものよりも「香り」と「珍しさ」を愛でるもので、パーティの手みやげに持っていくと、食べずともその場が盛り上がる。

一度レストランで食べた「トリュフのリゾット」のその香しい美味しさに唸った経験があるが、それ以外ではまだトリュフの魅力を知るに至らない。フォアグラのような「判りやすい」インパクトのある味ではないのと、この香りを引き出す料理の腕がないのと色々原因は考えられるが、我が懐具合を鑑みたらこの魅力は知らないままの方が幸せだろう。