壮大な光の芸術――Vectorial Elevationを見た後のささやかな夕食

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イヌイットの像とイルミネーションの木
オリンピックが始まる数日前の夜、我家の窓から上空にいくつかの光の固まりが動いているのが見えました。驚いて見ていると、生き物のように動くのです。テーブルの上の地元の新聞の一面に出ていた
“Vectorial Elevation” かもしれないと思い、新聞の説明を読んでみました。そこには何本もの強烈な光線が交錯した写真の下に、「メキシコ出身の芸術家がデザインした公共芸術。イングリッシュベイの上空に、曲芸的でまばゆい光のディスプレイが2月4日に点灯され、オリンピックの会期中の夜空に輝き続ける」そして驚くべきことに、「誰もがオンラインで動く光のデザインに参加することができる」と書いてありました。Public-Art(公共芸術)の意味は、人々がどこからでも参加できるということなのでしょう。

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イングリッシュベイの夜空に輝く光の芸術
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イングリッシュベイの夜空に輝く光の芸術
これはなんとしても見に行かなくてなりません。さっそく次の日、夕食の準備をしてから、日が暮れるのを待ってイングリッシュベイの海岸に出たのです。いつもはクリスマスのころに輝いているイルミネーションの木が、今年はオリンピックのためなのでしょう、2月の今もまだ輝いています。
私達は海岸沿いに、サーチライトに向って歩きました。その夜はお天気が良く、澄み渡った夜空に何本ものサーチライトが生き物のように動き、ときどきデザインを変えながら、幾何学的な立体を描いていました。光は、私達が立っていたサンセットビーチ側に10個、対岸の向う岸に10個、合計20個のサーチライトが、1個1万ワットという強烈な光を放ち、15km先まで照らすことが出来ると、あとで知りました。

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我家の定番 鮭のムニエル
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ささやかな夕食
光の芸術を堪能したあとは、家に戻って遅めの夕食です。出かける前に用意しておいた夕食の献立は、鮭のムニエルとサラダという簡単なもの。魚の種類が少ないカナダでは、鮭は日本人の私にとって貴重な海の幸、簡単に焼いただけでもおいしいので、ときどき我家の食卓に並びます。壮大な光の芸術の余韻に浸りながら食したささやかな夕食。いつもより美味しく感じたのは、美しい光を通す澄んだ空気、美味しい鮭を育んだきれいな水という、カナダの自然の大きな恵みを感じたからかもしれません。