じつに意味ありげな表紙です書店で気になる本を手にしたとき、最初にどのページを開きますか? ささやかながら文章を書いて口に糊しているムコ殿、まずは「奥付(おくづけ)」からチェックします。本のほぼいちばん最後にある、著者や発行日、発行者の名前が載っているページです。
ここで特に気になるのが、「初版」とか「第五版」とか、その本が何回印刷されたかを表わす数字。ベストセラーになるほど重版がかかる、つまり何度も追い刷りされるわけですから、この数字が本の売れ行きを示すバロメーターといえます。
さて、先日のことです。行きつけの古本屋で松本清張の『点と線』に遭遇。じつは未読だったムコ殿、ミステリー小説とはなんと秋らしい買い物だぜ、フフフン♪と早速買って帰りました。
時刻表トリックを使ったミステリーの元祖といわれるこの作品。何度となく映画やテレビドラマにもなっている大ベストセラーだけに、いったいどれくらい刷られているのか気になります。そこでいつものように奥付を見て、一瞬固まりましたよ。な、なんと、「平成二十二年 百二十六刷」とのこと!!!
文庫は1回に5万部くらい印刷されるといいますから、文庫だけでもすでに600万冊以上出ている計算です。多くの本が初版で終わるなかで今でも重版が続いているそうですから、そのうち「点と線、二百刷突破!」というニュースを耳にするかもしれませんね。
文庫の初版は昭和46年、
それから39年後で「第百二十六刷」!
ハードカバーの初版は昭和33年、
東京オリンピック前ですこの作品がハードカバーで書店に登場したのは、1958(昭和33)年。東京タワーの一般公開が始まったのがこの年だったそうで、作品の中で刑事たちの連絡手段に電報が使われているところに時代を感じます。そうはいっても文章自体に古さはまったくなく、読みやすい文章と次々と登場する謎、北海道から九州まで日本各地を飛びまわる展開に背中を押されるように、深夜まで読みふけってしまったムコ殿でした。
参考までに大ヒットマンガ
『ワンピース』第1巻の奥付。
2008年時点でさすがの「第70刷」博多郊外のある海岸で、男女の死体が発見されるところから事件は始まる。心中事件として処理されそうになったところを、ある1人のベテラン刑事が疑問を抱いたことから物語は動き出し、 執念の捜査で犯人とおぼしき人物が浮かび上がる。しかし、刑事たちの前に、時刻表の盲点を突いた完璧なアリバイ「空白の4分間」が立ちはだかる……。
もともとは旅行雑誌に連載されていたというこの作品、鉄道や飛行機のダイヤが登場するのもうなづけます。この先、電子書籍時代になってたとえ「第○刷」が「○万ダウンロード」に取って変わったとしても、この『点と線』のように「名作」と呼ばれる作品の魅力が色あせることはないでしょう。本当に読みやすい作品なので、この緊張感、ぜひ味わってください!