人類が月面に降り立った日をきっかけに……


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「友達の日」に友達と過ごす夕べ

「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩」
アポロ11号が月面に降り立ったのは40年前(1969年)の7月20日。
その時、アルゼンチンでもその歴史的瞬間を見守る一人の男の姿があった。その名もエンリケ・フェブラロ。
心理学、哲学、歴史の教授であり音楽家、口腔外科医でもあった彼は「人間が初めて月に降り立った瞬間、世界中の人びとの眼差しもひとつに集まった」とその“結びつき”の興奮を各国の人に伝えた。
すると彼が送ったその1000通の手紙に対して700通の返事が戻ってくるバイブレーションが起きた。アルゼンチンではその日に起きた「輪」を記念して7月20日が「Día del Amigo(友達の日)」と制定された。


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これがマテ茶。ボンビージャの差し方
やお湯の温度、注ぎ方には作法があり、
飲み方も人それぞれの個性がある

毎年「友達の日」には前後の週末も巻き込んでいつも以上に仲間が集まり合う。レストランやバーに限らず街の至るところで「友達の日」を促す光景を目にする。今年は新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の影響で例年に比べて外でお祝いする人は少なめだったが、その代わりに誰かの家に集まって控えめながらもほんわかした雰囲気でこの日を迎えた人が多かった。私も仲間の家に集まりアルゼンチンが誇る「マテ茶とマサ」でお祝いをした。

日本でも健康飲料として話題を集めたマテ茶は、南米を中心に飲まれている世界三大飲料のひとつで、味は渋め。「飲む野菜」といわれるほどビタミン、カルシウムなど健康と美容に良い成分が豊富に含まれている。「仲間が集まるところにマテあり」といったところで、ひとつの茶器とボンビージャ(ストロー)に入ったマテを友達同士で回し飲むのが伝統的な飲み方。マテ茶の回し飲みこそ友情の証! 友達の日にぴったりなのだ。

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ハート形とジャム入りのマサ。おいしそうですね
そして各自お気に入りマサを持ち寄った。マサとはパイやタルトの生地で、その生地を使った焼き菓子のこと。「マテ文化のあるところにマサ文化あり」といわれるように日常生活に欠かせないマテ茶に合わせ多種類のマサが出回っている。


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マサを使ったドーナツ。こちらもたまりませんね

マサの代表はFactura(ファクトゥラ:ミニ菓子パン)、その中で一番ポピュラーなのがメディアルナ(半月)と呼ばれる小型のクロワッサン。マンテカ(バターたっぷり、甘めの太っちょクロワッサン。)とグラサ(プレーンな味のカリカリしたクロワッサン)がある。デュルセデレチェ(Dulce de Leche、ミルクキャラメル)やジャムをたっぷり塗ったファクトゥラや、デュルセデレチェをマサではさんだアルファフォーレがマテの苦味と巧妙に組み合わせられる。アルゼンチンに来てお腹の出が気になったら、犯人はこのマサ(炭水化物!)か、遅い時間の夕食だと思ってまず間違いない。それくらいこちらのマサは美味しくてやめられない。なんといっても材料の小麦はアルゼンチンの広大なパンパ地帯で栽培されている、大地がもたらす恵みの味なのだ! さて7月の始めには猛威を奮う新型インフルエンザのこれ以上の感染を防ごうと、マテ茶の回し飲みが禁じられた事もあって今でもマテの回し飲みは控えられてはいるが、それでも「マテ、マサ、それを共有する友達」これら3種の神器をもって友達の日をお祝いできたことに幸せの原点を感じた人も多かったのではないだろうか。
友達の日、ありがとう。