ノスタルジーに浸りつつ……高校文化祭

校門をくぐるのはもう何十年ぶりだろう。7月11日(土)、母校である千葉県立長生高校文化祭。
最近の文化祭時期はずいぶん早い。私達のころは9月初旬だったが、今では7月、夏休み前に高校生活のハイライトを迎える。長い夏を受験勉強にすべて注ぐということなのだろうか。

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社会科研究部による江戸時代の七夕飾り
「こんにちは?」
腕章をつけた文化祭実行委員たちが、にこやかにプログラムを手渡す。気がつけば私もすでに在校生の親世代。恩師も誰一人残っていない。もはや知った顔のいない校舎。3年間見慣れたはずの昇降口も体育館通路も、まるで初めての場所のようでなんだか泣きたくなる。
それでも校舎内に入ると記憶が戻る。廊下の巨大な鏡、角を曲がれば食堂。毎日パンを買いに走ったっけ。

目の前の生徒達は制服ではなく、カラフルな各クラスお揃いのTシャツ。
「いらっしゃいませー! 3階で和風喫茶やってまーす!」
呼び込みをする浴衣姿の女子生徒。まずは腹ごしらえ。チケットを買うために長蛇の列に並ぶ。パンダが目印のお店だ。 090723_02.jpg
文化祭の定番・おばけ屋敷
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やっぱり作りますよねえ、
Tシャツとかトレーナーとか
食事メニューは「かた焼きそば」だけ。飲み物は「タピオカドリンク」。各種ドリンクにタピオカが入っているのだが、「カルピス」「ミルクティー」はすでに売り切れ。残るは「レモンティー」だが……どうも、沼の水とカエルの卵を連想してしまうのでパス。
座席に案内され、整理券を渡される。Tシャツ軍団が次々と調理室から現れた。
「33番のチケットお待ちのお客様ー!」
にわか給仕たちはもたもたしていて不慣れなことはなはだしく、すぐにお客を発見できない。ああ、だから混乱を避けてメニュー1種類だけなのか……。
ようやく料理が到着、いただきまーす。高校生食堂にしてはおいしいぞー。って、レトルトだなこりゃ。まあ、そのほうが失敗はないよね。
次に行ったのが「冥土(メイド)喫茶」。外装が凝ってるねえ(笑)。小倉ジェラート(90円)を頼んだら、出てきたのがカップのままのアイス! あらまあ興ざめ……。
改めてあちこちのお店のメニューを見てみると、ペットボトル飲料や、菓子パン、アイスその他ばかり。調理ものはほとんど皆無。クレープ・たこ焼きとかないの? 高校文化祭としてはかなり淋しい?。あ、そうか、「食中毒」や「新型インフルエンザ」の影響だ。

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ハズレなし仕様!? かた焼きそば
オバケ屋敷はさすがに盛況。しかし並ぶ気力はないなあ。そろそろ“文化”祭らしいものを見たくなった。というわけで、文化部の発表を見に行った。

美術部、書道部、生物部。うー、ホッとする。社会科研究部は江戸時代の七夕飾りを復活させ、新聞(地方版)に載った。スイカやひょうたん、徳利の張り子(立体オブジェ)まである。和歌の書かれた手漉き手染めの短冊は書道部とのコラボ作品。
体育館ステージではバンド演奏。血が騒ぐっ。私も昔、バンドであの場所に立った。夢中で弾いていた自分をステージの子たちに重ねて、胸が熱くなった。未来への憧れを無限に抱えていたあのころ。自分と違う“よく知った誰か”のような、それでも鮮明に思い出せる“あのころの私”。
ノスタルジーに浸りつつ、ひとり校門を後にしたのだった。