漁師の守護聖人、サン・ペドロの祭り

リマ市の南に位置するチョリージョス区は、豊かな海に面した港町だ。獲れたての新鮮な魚介類を売る市や、美味しい魚料理を出す店がたくさんあり、夏ともなれば大勢の海水浴客や地元の人々が、冷えたビール片手にセビーチェ(魚介類のレモンマリネ)やハレア(魚介類のフライ)に舌鼓を打つ。


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「ママ!見て!」と大はしゃぎの子供たち

ここで毎年盛大に行なわれるのが、サン・ペドロ(聖ペトロ)、サン・パブロ(聖パウロ)の祭り。もともと漁師だったというサン・ペドロは漁師の守護聖人でもあり、チョリージョスの人々にとても愛されている。町の教会にはサン・ペドロの像が祀られており、6月29日のミサの後、その像を海へと運んで豊漁を祈願するのだ。

当日、チョリージョスの中心地は歩行者天国になっていた。服や小物、少し怪しげな商品を売る出店が並び、移動遊園地も子供たちに大人気。区内の学校や企業によるパレードが華々しく行なわれ、沿道で待っていた家族や友人らが拍手喝采で応援していた。


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タマネギとハムが溢れ出しそうなブティファラ


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秘伝のタレに漬け込んだ鶏肉の
バーベキューはとてもジューシー!

そしてずらりと並んだ屋台! ポップコーンや豆菓子、サトウキビジュースに綿菓子などの駄菓子類から、豚の皮をからりと揚げたチチャロン、ハムとタマネギをたっぷり挟んだブティファラ(ペルー定番のサンドウィッチ)、もくもくと煙を上げながら焼かれるパリジャーダ(鉄板焼き)、煮込み料理、ジャガイモ料理と種類も多くて値段も安い。あれこれ目移りしてしまうが、チョリージョスに来たのだからやはり魚だろうと、ティラディートというセビーチェに似た魚のマリネと、カビンサンというこの港で獲れる魚の丸揚げを食べることにした。新鮮な魚はシンプルな調理法ほど美味さが引き立つ。さすが港町、屋台といえどもとても美味しかった。


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キスに似た魚、ペヘレイのティラディートは
一皿たったの2ソル(約65円)


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こちらはcabinsan(カビンサン)という魚の丸揚げ。
レモンや アヒ(唐辛子)をかけていただく



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海上でのミサを終えたサン・ペドロ像。
銀の魚とは別に、豊漁祈願の
本物の魚も手にしていた

食べることに夢中になっている間に、教会でのありがたく長いミサも終わったようだ。ようやくサン・ペドロ像が教会から運び出され、ゆっくりと港に向かい坂を下っていく。漁師を象徴する銀の魚とキリストから手渡された天国の鍵を手にしたペドロ翁、金糸で縁取りされた真っ赤な衣装が少々重たげだ。色とりどりの花で飾られた舟型の御輿に向かって、人々は小銭を投げ入れる。漁だけでなく、すべてに幸あれと祈りを込めて。

海上でミサを執り行なうため、祭りのメイン会場は町の中心地から港へと移された。サン・ペドロ像と神父、来賓を乗せた舟が桟橋を後にすると、その周りを取り囲んでいた多数の遊覧船も次つぎと出港していく。すっかりお腹が膨れていた私は、遊覧船にも乗らず友人と港でビールを飲み交わし、波間の祭典をただぼんやりと眺めていた。そしてまた来年もここで美味しい肴と冷えたビールを楽しめますようにと、沖に向かって乾杯したのだった。