暗くて寒い冬が過ぎ、待ちわびた春がとうとうやってきた!アイルランドの緑の大地には黄色いタンポポやプリムローズを始め、色とりどりの花たちが春に彩りを添える。いよい『春本番』、といった感じである。
さてそんな緑がまぶしい季節になると、いつもお菓子やジュース、ミネラルウォーターをたっぷり持って、気の置けない友人たちと「探検」に出かけることにしている。「探検」といっても別にジャングルへ踏み込んだり、洞窟へもぐっていったりするわけではなく、家の近くにある林や森にある“知られざる小道”を探すだけのことであるが、これがかなり病みつきになるのだ。
アイルランドはたいていグリーンの草原や牧場が広がる、山や森がほとんどない国だと思われがちだが、実はこういった地元の人しか知らないような“ヒミツの散歩道”が結構隠れているのである。
そういうわけで、春の暖かい日差しが気持ちいいある週末に、さっそく食料をリュックにつめて、目星をつけた林へGO!これからの季節は、アイルランドの自然を満喫するのにはまさにベストシーズン。目的地へ到着すれば、林近くのゴルフ場でゴルフを楽しむ人々の姿も見える。湖をぐるっと取り囲むように茂る林の中へ続く細道へと歩いていけば、木々から息吹く新緑の若葉が目にしみるほどだ。
基本的には道に沿って、のんびり談笑しながら歩いているだけなのだが、林の中には冒険心を誘うものがいっぱいある。見たことのない不思議な植物、嵐で倒された大木、石造りの廃墟……。湖のほとりから、食料になりそうな(?)魚がいないかを必死で探しているうち、バランスを崩して湖中に転げ落ちそうになったりといったアクシデントも『探検』には付きものなのだ(大げさな)。
のどが渇き、さらに小腹もすいてきたので、持ってきたお菓子や水で一服する。この林のところどころには、自然の中に溶け込むかのように年季の入った木のテーブルや椅子が置かれていた。そこで私たちもしばしの休憩。今日の私たちのように、こうしてここで一休みする人たちも多いにちがいない。
散歩…、もとい『探検』を再開する。しばらくして林が途切れ、どこかの広い駐車場に出た。どうやらそこが出口らしい。目の前にはおいしそうな香りを漂わせたカフェがあり、カフェの前では何と八重桜が誇らしげに咲いている。
そういえばそろそろ日本はお花見の季節。アイルランドにも日本の桜が多く植えられているが、残念ながら“花見”の慣習はこの国にはない。そもそも公共の場での飲酒は違法なので、桜の木の下で景気良く一杯、なんてことをしていたら警察に叱られてしまう。
嗚呼残念――。じゃあ、代わりにカフェでサンドウィッチとほくほくのフライドポテト、そしてコーヒーをお供に桜を愛でるとするか。