日本の夏といえば、毎日のどを潤してくれる麦茶。夏の定番中の定番の飲み物だけど日本の蒸し暑い夏は長い。甘い飲み物は飲まない世代となれば、時には違う味でサッパリしたい……と思うことがあるはず。
中国に“白牡丹”というお茶がある。日本語で白牡丹と聞くと、演歌っぽく聞こえるが、英語になると“ホワイト・ピオニー”となんだかオシャレな響きになる。本家中国では“バイ・ムーダン”と呼ばれている。白牡丹がよく飲まれるのは香港だろう。香港の茶商に行くとよく白牡丹を買うが、半斤(約250グラム)単位の大きな袋に入っている。
見るからに爽やかな緑色した水出し冷茶白牡丹は中国茶では白茶と呼ばれる種類の微発酵茶で、茶葉はしおらせた葉と産毛がついたままの芽と、硬く緊密な日本茶の茶葉に慣れた日本人には、できそこないのお茶のような印象を持つかもしれない。お茶の色は薄緑で、口に含むとアッサリした喉越しの後、ほのかな甘みが後に残るのが不思議な感じを覚える。この種の白茶の工程は実にシンプルで、摘んだ芽の部分の茶葉を干して水分を飛ばして萎れさせる(実はこの間に茶葉はゆるやかに発酵している)。その後に軽く火入して発酵を止める。これだけなのだ。それだけに微妙な職人の腕が問われるところなのだろう。最近では紅茶茶葉の世界でも白茶=ホワイトティブームなのだそうで、ダージリンホワイトティなどは店頭でもみかけることがある。白茶というのは製法であって、白茶であるかぎり紅茶ではないのだが、これもひとつの“グローバル化”なのだろうか。
この微発酵の白茶は、身体の熱を取る夏のお茶といわれている。科学的にどうかは定かではないが、確かに無発酵の緑茶や、微発酵の白茶は喉越よく、さわやかな気分になるので春から夏にかけて飲みたいと思うが、秋から冬になると発酵の高い紅茶や岩茶を身体が望むのは、発酵が身体に及ぼす熱の作用があるかもしれない。身体は自分の環境に対して正直に欲しているのだと思う。
産毛のある白牡丹の茶葉この白牡丹、暖かいお茶でも美味しいけれど、夏のお茶らしく水出し冷茶でもなんとも爽やかにいただくことができる。作り方は簡単。ストレーナー付きの水出し用ポットに計量した茶葉とミネラルウォーターを入れるだけ。茶葉は水1リットルにつき8グラム程度が目安。でもこの分量はあくまでも目安で、白牡丹でもさまざまな質の茶葉があり、乾燥が進んだ茶葉が多い場合は量を少なめにするなど、購入した茶葉によって調節するのがオススメ。6、7時間ほど冷蔵庫に置いておけば、ポットのお茶は緑色になっているはず。これだけで完成!
本格的に暑くなってくると、ミントの葉を入れるとさらにサッパリするので、こちらもお試しあれ!