【初夏はお茶】ちょっと一杯の気軽さ――トルコの出前茶

お茶文化に「かしこまり系」と「気軽系」があるとしたら、トルコのお茶文化は間違いなく「気軽系」だ。例えば、日本の茶道、イギリスのアフタヌーンティーは「かしこまり系」、食前食後の日本の緑茶、インドのマサラチャイは「気軽系」。「かしこまり系」は、作法と格式とか、お茶をいただく過程が重要、「気軽系」はお茶そのものを気楽に楽しむ感じ。

だから、「気軽系」トルコのお茶にマナーはいらない。難しい作法はおいといて、まあ一杯やろうぜ、という気軽さ。気軽で気楽だから、1日に何杯でもいける。朝目が覚めたら、仕事を始める前、休憩時間、仕事が終わった後、お茶でほっと一息つく。音を立ててすすったり、おしゃべりしながら、トランプしながら、テレビでサッカー観戦しながら、あるいはぼーっとしながらの、ながら飲みも全然かまわない。飲み方も、砂糖をたくさん入れてぐるぐるっと勢いよくかきまぜる。

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今回の舞台である城壁の街・アランヤ
街を歩いていると、お茶を乗せたお盆を運ぶ男性によく遭遇する。そして、タクシー乗り場とか通りのベンチとか、道のあちこちにチューリップ型のグラスが置きっぱなしになっている。お茶が近くのチャイ屋さんから配達されて、ぐぐっと一杯やった後だ。商店街やオフィスビルには、チャイ屋さんとつながっているインターホンがあって、これで注文すると、すぐにお茶を持ってきてくれる。

気軽系なんだから自分で簡単に入れられるんじゃない?と思わないでもない。煮出し式のトルコのお茶を入れるのは、意外に手間だから?

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お茶屋の男性が颯爽と出前。
露天の店先からバス停までなんでもござれ
そういえば、日本にも似たようなシチュエーションがあった。疲れて帰宅して、なーんにも作る気がしない時、わざわざ外に出かけるのはめんどくさいけど、なんかいつものと違う感じのものを食べたいよね、っていう時にお世話になるのが、ラーメン、そば、丼ぶりものの出前。この出前文化(?)に通じるところがあるような気がするのだ。インスタントラーメンなら自分でもすぐに作れるし、そばや丼ぶりだって、最近はなかなかのお味で簡単に料理できるレトルトがたくさんある。でも、そうじゃない何かを食べたいよね、という気持ち。トルコの出前茶にもそんなところがあるのでは、と勝手に想像してみる。

出前、何にする? 牛フィレ肉とフォアグラポワレのミルフィーユ! というシチュエーションはちょっと考えにくい。出前には、普段食べなれているものがいい。とすれば、お茶の出前を頼むトルコ人の気持ちが理解できるような気がしてくる。注文すればすぐにあつあつの濃いお茶が飲める。これこそ、「気軽系」のゆえんだ。

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こちらがトルコの伝統的なハーブティー