現在パートナーの実家がある英国に来ています。
英国といえばもうすぐロンドンオリンピックが開催される土地ですが、私が滞在しているのが開催都市ロンドンではないからか、オリンピックに関心がない人たちと一緒にいるからか、どちらにしても、開催国に来ている割には個人的な盛り上がりはまだいまひとつです。
個人的なオリンピックの思い出といえば、自分が高校一年生の夏に開催された夏季バルセロナオリンピックでしょうか。当時の私は、受験に失敗し自分が通うことになるとは思いもしなかった地元の高校に進学せざるをえないという(今から思えば小さな)屈辱を味わいながら初めての高校生活での一学期を終えたところでした。
当時14歳だった岩崎恭子選手。
シンデレラガールの活躍に、テレビの前で興奮、感動したものです夏休みを迎えたころになってもその学校が好きになれずにいた私は、夏休み中に学校を変えられないかと、他の学校への編入手段を調べ始めました。思いつくところに電話をして編入の可能性、やり方を調べましたが、長い話を短く言えば、編入はできないことがわかりました。その後3年間もその地元高校に通わざるをえないとわかり、なんだか絶望的な気持ちになりましたよ。今から思えば本当に小さい話なんですけどね。
そんなときに連日テレビで流れていたのが、夏季オリンピック中継。オリンピックって出場するまでに死ぬ物狂いの練習があって何度もの予選があるんですよね。その予選を見事勝ち抜いて、選考で選ばれて、やっとやっとやっと国の代表選手になってオリンピックにいけるんですよね。それでもって、そのオリンピックでの「一回きり」の勝負で、それまでのことも、これからのことも、すべてが決まるんですよね。なんだか、そういうやりきれなさにセンシティブになっていた当時の私は、その過酷さがちょっぴり残酷に思えて、泣けてしまったものです。実力では負けてないのに、当日力が出し切れなかったことで決定的なものが得られない……。
なんだか、それがそのときの自分と重なってしまったりして。
でも、選手たちの挑戦する姿を見ていると、結果に関係なく、その姿は実に感動させられるものでした。その年のオリンピックは、14歳で金メダルをとった水泳の岩崎恭子選手や、選考段階ですったもんだがありながらも見事銀メダルを獲得したマラソンの有森裕子選手、試合直前に大ケガを負いながらも金メダルを獲得した古賀稔彦選手など、さまざまな選手がドラマを生んだ大会でした。
現状に気持ちが沈んでいた私でしたが、選手の姿から熱いものをたくさんもらいました。転げてもまた起き上がればいいさ、周囲の雑音に惑わされず自分の道を行けばいいよ、執念はものすごい力を発揮するんだ、勝負は試合が終わってからだよ……なんて風に。選手たちの懸命に闘う姿を見ながら得た感動が、現実を前向きに受け入れる視点を私に教示してくれました。
現在、開催国イギリスに来ております。
滞在先がオリンピック開催地であるロンドンではないためか、
筆者のまわりでは(まだ)盛り上がり度低めでございますあの夏のオリンピックから20年経った今では、その高校に通ってよかったなあって思います。かけがえのない仲間との出会いがあったから。彼らとの関係は卒業20年経った今でも宝物。この宝物のために、回り道したのかもしれないな、なんて。「大切なものは目に見えない」(星の王子さま)の世界ですね。
オリンピックの感動は、一回きりの勝負だからこそ生まれる。20年前は、勝負が生み出す光と影に心を痛めた私でしたが、今は一瞬に宿る勝負だからこそ生まれる一生懸命さに目を向けています。
今年のオリンピックも開催まであとわずか。選手たちの姿からまた元気をもらえそうです。
がんばれ、ニッポン!