先日、テレビで“国民的時代劇”を観ていたところ、賭場のシーンで「丁半」が行なわれていた。
丁半とは、サイコロをふたつを使用し、壷に入れて振られたサイコロの目の合計が偶数であれば「丁」、奇数であれば「半」と読んでチップ(木札)を張り、当たったほうが賭けた分のチップがもらえるゲームである。賭場を開帳している胴元が配当を支払うわけではないので、丁方と半方でチップを揃える必要があり、上乗せなどして揃ったところで「丁半揃いました」と壷が開いて勝負となる。この形態で胴元はどのように儲けるのかというと、一勝負ごとに一定のテラ銭(参加費)を徴収することで……などと解説をしておりますが、言うまでもなく金銭を賭けての丁半は現代社会では犯罪です(笑)。また、“国民的時代劇”の賭場にて“風車”が「お仲間にもよろしくな」と去っていった場合、そこではイカサマが行なわれております。どうでもいい話でした。
イチロクの半。
7が出やすいから半が有利?さて、今回はそんな丁半と確率論のおはなし。
まずはこんな仮説をどうぞ。
仮説1・サイコロふたつの出た目の合計で、いちばん多く出現するのは「7」。故に半のほうが当たる確率は大きい。
仮説2・サイコロふたつの出た目の合計は、偶数と偶数が出た場合は偶数、さらに奇数と奇数でも偶数だが、偶数と奇数の場合は奇数となる。つまり偶数と奇数の3通りの組み合わせのうち、偶数になるのが2通り(66.7%)であるが故、丁のほうが当たる確率は大きい。
どちらもなんとなく説得力があるような気がするのだが、必勝説として丁方と半方で分かれたからにはどちらかは必ず間違っているわけであり、そして結論としては当然ながら両方とも間違っている。
仮説1は、「2(1と1)」と「12(6と6)」などひとつしかない組み合わせがあるなかで、「7」は最多の6通りあり、たしかに「7」が出る確率は高そう、いや実際に高いのだが、それは「半の場合に7が多い」ということでしかない。たとえば「6と6で12」が出現するのは珍しいようにも思えるが、「4と3で7」や「1と2で3」も出る確率は同じ36分の1である。
ピンゾロの丁。
偶数+偶数は丁、奇数+奇数も丁。
半になるのは偶数+奇数だけ……??翻って仮説2はどうか。偶数と奇数の3通りの組み合わせで2通りが偶数になるのならば間違いなく丁が有利だが、そもそもこれは3通りという前提が間違っている。先に「4と3で7」(偶数と奇数)と書いているが、これは「3と4で7」(奇数と偶数)の場合もある。
つまりサイコロふたつの偶数と奇数の組み合わせは、
・偶数+偶数=偶数
・奇数+奇数=偶数
・偶数+奇数=奇数
そして、
・奇数+偶数=奇数
この4通りであり、偶数になるのも奇数になるのも確率は4分の2、50%なのである。
どちらも確率論の盲点的な話だが、単純にサイコロふたつの合計をすべて出せば「偶数・丁=18通り、奇数・半=18通り」と一目瞭然の同確率。仮に有利な目があればそちらの倍率を下げなければ成立するわけないのだから当たり前である。
なお、偶数・奇数を当てるゲームだからこそそうなるのであって、出た目の合計を当てるカテゴリーがある「大小」などのゲームでは、出現確率が高い目(丁半での7など)はもちろん低倍率に設定されている。