去る6月26日、中央競馬(JRA)史上最高となる1点(100円)2億円の配当金が飛び出した。
この馬券は特定5レースの1着馬をすべて予想する“五重勝式(海外では六重勝式などもある)”というもので、「WIN5」の愛称で呼ばれている。「最高2億円の配当!」を謳い文句に本年4月24日から登場し、10回目の前回で初の2億円配当となった。注目された初回、的中票数が多すぎて80万円強の配当にしかならなかったとき、「難易度の割に配当が安すぎる(=みんな予想がうますぎる)→売上減→ますます配当が下がる」というその後の悪循環が懸念されたが、今回の大爆発によってさらに注目を浴びることは間違いない。まあ、筆者もその注目の恩恵を受けたいものだが、おそらくその日はやってこないことがわかった過去10回であった。無念だ。なお、売上金と配当の関連については過去のウンチク『私の負けがあなたの勝ちで』 をご参照のほど。
飛び出した2億円馬券。
ただし当たった人、税金かかりますよところでこの2億円、当たったからって丸々フトコロに入ると思ってはいけない。非課税対象の宝くじやスポーツ振興くじ(いわゆる「サッカーくじ」)と異なり、競馬を含む公営競技では年間50万円以上の配当金を受けている場合は“一時所得”として課税対象となる。一時所得(いわゆる“濡れ手に泡”的な所得)なので、確定申告時に給与所得などと合算し課税額が決まるのだが、今回は2億円の配当だけにスポットを当てて納税額などを算出してみよう。
まず、一時所得の特別控除額の50万円と、馬券的中額が必要経費となるので、それらを2億円から減算する。必要経費分は馬券の購入額ではなく的中額だけなので、ここでは100円を引いた上で、その額の半分が課税対象額となる。
式としては、
(2億円−50万円−100円)÷2=課税対象額
となり、答えの9974万9950円をもとに納税額が決まる。
この金額の所得税の累進課税率は40%であり、住民税が10%であることから、さらに半分の、
4987万4975円
これが2億円馬券の納税額。
ということで2億円から納税額を引いた手取り金額は、
1億5012万5015円
となる。
これは所得税の累進課税率が課税対象額によって変わることを除けば、公営競技(というより一時所得となる対象では)すべてで同様である。
ところで、そのような高額配当を得た人がそもそも一時所得として納税をしているのか。大当たりをしたことが報じられてしまった著名人はともかく、一般人はなかなかしないのが正直なところのようだ。
今回の「WIN5」は現在のところインターネット投票の専売なので、徴税する側も捕捉しやすいのではと思ったが、実のところ胴元にも、配当を扱う銀行にも税務署への通告義務は存在しない。「隣の家のご主人が当たったらしい」などと噂が流れても当の本人が名乗りを上げなければどうにもならず、裁判所からいわゆる捜査令状が発せられない限り強制捜査をすることもできない。徴税側としたらこの2億円フィーバー、頭が痛いところなのかもしれない。