2014/9/19
山の天気は目まぐるしく変わる。昨夕、吹雪いていたと思ったら、登頂日にはちゃんと晴れた。
と言っても、起床は夜中の12:30。朝食して準備して出発は2:35。
真っ暗な中、ヘッドライトを点けて歩き始める。
「朝、テントの中でマイナス15度でした」
相当寒い。冬ウエアの上に極厚のダウンとカバーパンツを着てだから、ころころ。
もう、迷いはなかった。
結果を気にかける心理もどこかへ飛んでしまっていた。
出発に向けて黙々と準備する。
あとは頑張るだけ…
以下がC1→Submit→C1の凡そのタイムである。
12:30-起床
02:35-C1出発
06:30-氷河5850m到着
09:30-プラトー着
10:00-プラトー出
13:05-山頂
18:05-C1帰着
C1を出てからの長い不規則な岩稜歩き。昨夕の吹雪でかなり雪が付き、凍結部もあったりで、かなり歩きづらい。真っ暗な中で、たびたび危険個所もある。シャエルパさんが「まだ必要ない」と言ったけど、篠原ガイド判断でアイゼン装着していって大正解。
出かけしな見たら、我々の少し上でCを張っていたパーティーはひと足先に出たようだった。我々は2番手発だ。
明るくなると後続がよく見晴るかせるようになる。C1設営は我々と、もう1パーティーだったから、ベースから上がってきたパーティーということになる。さらに時間が経つと、前にも登山者の隊列が見えるようになる。
なぜか?
さよう、どんどん後から来ては、私を追い抜いて行く。2番手だったはずが、もう何番手かさえ分からない。悔しがろうが歯ぎしりしようが、どうしようもない。自分が歩くのが遅いんだもの。
だって、もうこれ以上早く歩けないんだもん〜!
プラトー到着。ヘトヘト!
見れば力なくしゃがみ込んでる人。恐らく高度順応ができず敗退したと思われる。登頂して戻ってくる仲間を待っているんだろう。
なんだかな〜
ちらり不安がよぎる。
さて、いよいよ最後の雪壁!標高差200mの巨大雪壁をユマーリングで上がる。早晩、2回アップしては「ハーハーハー!」、2回アップしては「ゼーゼーゼー!!」で、ちっとも上がって行かない。
「ハーハーハー!」、「ゼーゼーゼー!!」している間に後から登ってきたクライマーが追いついて、追い抜いて行く。
チックショ〜!!!
ベースからのクライマーにはもちろん、後から聞けばチュクンから直のクライマーにも、すなわち当日、アイランドピーク登頂を計画した全てのクライマーにことごとく追いつき、追い抜かれ、ついにラストクライマーになっちゃったぜ!
上がりかまちに、篠原ガイドが待ち構えていて「もう少しですよ!コダマさん頑張って!!」と声をかけてくれる。
「はーい!」と応えるのも息が切れるわ!
やっとの思いで雪壁を上がりきったら、「山頂はあっちですよ」!
マジかよッ!!
さらに15mほどのだらだらトラバース登りが、まるで地獄のよう!
で…
山頂!!!
やったー!!!の雄叫びより何より、取りあえず、その場に崩れ落ちてしゃがみ込んだ。
そしたら、泣けてきた。
「もう登るのは終わった」の安堵感とあまりにも「辛かった」ことからの解放感と、そして、大きな大きな喜びとない交ぜの感情が怒涛のように押し寄せてきて、それはもう胸が痛くなるほどで、泣き出したら止まらなくなった。
子どものように大声で泣いた。
泣き疲れた。
泣くというのは、たくさん酸素を使うらしい。息が切れた。
座ってもいられなくなって、ひっくり返った。
「落ち着いたら、周りを眺めるといいですよ」
見渡せば、なんという光景が広がっていたことか!
頂は地図上でそれぞれが点に違いないが、ヒマラヤ山塊は胸懐深く広い地球上で脈々と一連に連なり、今私が立っているアイランドピークの頂とすぐ近くで山裾がヌプツェやローツェ、先はエベレストと連なっているという山刻を視覚で実感する。
スゴイ! 素晴らしい!!
こんなところに私がいるなんて、まるで夢だ!
感動でまたまた目が膨らんでくる。
「よく頑張りました!」
思わず篠原ガイドに抱きついてしまった。
C1から山頂まで、なんと10時間30分。
「13時までに登頂できなければ諦めてくださいね」
そう言われていたが、登頂時間はなんと13時5分だった!
下山は5時間。登山家ならぬ下山屋の領分大いに発揮で、C1までの下山は登頂時間の半分。全15時間の歩行でC1帰着が夕方の6時。ヘッドライトつけないギリギリの時間だった。
ヨレヨレのクタクタ〜!
もう、ダメ〜!
テントの中で速攻死んだ〜
コックさんが登頂祝いにご馳走を用意してくれたんだが、内容は覚えていない。ここまで材料を上げるのも大変だったろうと、ありがたく感謝なのは重々なんだが「Congratulation Getting submit IslandPeak!」と記されたケーキも一口も食べられない疲労困憊っぷり!
「ちゃんとシュラフに入らないとダメですよ」
片付ける間もなく、身じまいする暇もなく、落ちた認識さえなく眠りこけた。
何も思わず、夢も見ず、綿のように…
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