★安全な登山をするのにまず必要なのは“想像力”! 家庭で出来る“エア登山”から目的の山を安全に登る道筋は始まっております。今回は泊まりがけで山に行こうというおはなしですが、初の人は“安全な登山の伝道師”三笘育さんの経験を下に“エア登山”、してみてくださいませ。
“山小屋泊”でも安心は禁物!? 「初めての山泊」で起こった大トラブル
小玉▲山に登るべく体力の把握や、装備を調える際にも“想像力”を働かせて……というお話しをうかがってきましたが、今回はいよいよ実際に山に行ってみようと思います。しかもハードルを上げて(笑)、「泊まりがけで山に行こう!」というお話しです。
三笘●そうですね。泊まりがけと言っても山小屋に泊まる場合やテントを持ってということになります。
小玉▲当たり前ですが、テントで泊まることが想像できる場合はテントを持って行かなければなりませんね(笑)。
三笘●はい(笑)。最初からテント泊と決めている場合はもちろんそうですが、決めていない場合ももちろんあります。
小玉▲遭難……まではいかなくとも、いわゆるその場でビバークしなければならない場合ですね。
三笘●そうなることが想像できる山の場合は用意をしておく必要が出てきますよね。ただまったくの想定外もあるから難しい。
小玉▲それがおもしろい、で済めばいいのですけれどね(笑)。
三笘●はい。以前、インタビューでもお話ししましたが、私が最初に自分から山に登ろうとしたときにそんなことが起こりましたからね。
小玉▲たしか奥多摩で……。
三笘●そうですそうです。「しし座流星群」を見ようと思って、それならば星の綺麗なところだと思ったのですよ。
小玉▲そのころにはすでにアウトドアの活動はなさっていたのですよね。
三笘●はい。奥多摩で低い山へ登ったり、キャンプなどはしていたんですよ。なので、なにを持っていけばいいかの想像はしていけますよね。
小玉▲すでに山を歩くくらいの服装や寝袋などは持っている。
三笘●寝袋とかちょっとした装備はあったので、それらを担いで登りに行ったんです。しし座流星群を見て鷹巣山の山小屋に泊まる、ここまでは想像していたとおりですね。
小玉▲はい。
三笘●それが実際に登っていくと、途中でもう暗くなっちゃったんですよ(笑)。
小玉▲想像外のことが起きてしまった、と。
三笘●ええ。山小屋どころかいま自分がどこにいるのかもわからなくなってしまいました。しょうがないので林の中で寝袋に入って寝たのですけれどね。
小玉▲「山小屋に泊まる予定」ですからテントは持っていっていませんしね。時期はいつごろだったのですか。
三笘●流星群が綺麗に見られる時期ですからね。11月でした。
小玉▲冬場で寝袋一枚、ですか……。
三笘●しかもキャンプをしていたと言っても春か夏の話じゃないですか。なので寝袋も夏用だったのですよ(笑)。気温にしても氷点下近かったと思っておりますが、寒いはずですね。
小玉▲最初の登山からすごい……。
三笘●鹿に囲まれたりもしましたからね(笑)。東京で生まれ育って、鹿に囲まれた経験なんてないですから、山っていうのはすごいところだな……って。
小玉▲三笘さんのほうがすごいですよ(笑)。
三笘●ただ、いいこともあったのですよ。目的はしし座流星群ですから、それを林の中で見たわけです。枯れ葉の上に寝ながら木々の間から見た……その日のしし座流星群はホントにすごかったんですよ。自分の視界の端から端までビューっと流れていきましてね。いまだかつてあれほどの流星は見たことないですよ。
小玉▲それは見てみたい!
三笘●それはもうぜひ。朝も冬らしく空気がすごく澄んでいまして、鷹巣山から東京湾が見渡せました。ついでに、自分が寝たところの隣に山小屋があったのも気が付きましたけれど(笑)。
小玉▲ははは。
三笘●この経験が山登りやいろいろなところへ行ってみたいな、と思うきっかけになりましたね。それで次の山に行こうかなとなったときに……。
小玉▲その経験が活きる。
「山小屋泊だし雪山でもないけれど、テントがいるかもしれない」
経験から来る“想像力”の賜物三笘●そうですそうです。どれくらいの時期で、どんな山なのか、という想像ができるわけです。同じように鷹巣山の山小屋を目指して進んでいく場合、どれくらいの時間がかかり、どれくらいで日が沈むかが想像できるようになる。
小玉▲「この林の隣には山小屋がある」とかもですね。
三笘●はい(笑)。ただこの経験を活かした“想像力”は、当然ながら実際に登ってみないとわかりませんよね。ひとりで行くと私みたいなことになる可能性もありますから、やはり初級者の方はガイドや経験者の“想像力”と一緒に行くことをオススメしますね。
小玉▲この三笘さんの例を知って、「じゃあ山小屋に泊まるけどテントは持っていこう」くらいでの単独行は危険です(笑)。
三笘●まあそういうこともあるのか、と出発前に想像するだけがいいと思います。それだけでもこれまでの登山とは違った趣になるとは思いますので。