2時間目・序章―登山は想像力(2)

★前回から始まった「三笘育の登山は想像力」。現場での行動だけでなく、そこまでに至る“エア”でもできちゃう山登りや装備に対する“想像力”を“安全な登山の伝道師”三笘育さんが教えてくれます。今回は山に行く前の装備につきまして……。

←前回へ

「どこに行くか、なにをするか」を想像して準備ができる

m20150619_a.jpg小玉▲さて、ではハイキングに行こうとか山に登ろうと考えたときに、その準備段階がありますよね。用具や服装があるわけですが、たとえば私、そろそろ奥多摩以外のところに以降と思っていたときに、みんなで大荷物を背負って(丹沢の)塔の岳の花立で宴会をしたことがあるんですよ。
三笘●ほう(笑)。
小玉▲まあ当時の私は宴会どころか辿り着くのもやっとで、汗だくになっちゃったんですね。そのとき着ていたのが綿のシャツで、冷えてきたら死にそうなくらい寒くなっちゃったんですよ。雨具は持っていたので慌ててそれを着て凌いだんですが、そのときにやっと「山に登るときは速乾性のものを」って知ったんですね。
三笘●経験してそれを知識にするというのは尊いことですね。
小玉▲ですがまあ、それは最初からわかっていたほうがより安全ですもんね。
三笘●はい、それはそうです。その一発で凍死されていたかもわかりませんしね。
装備に関して言いますと、登山用具店に行きさえすれば誰でも、夏山に登る服装くらいは大きなミスを犯さずに買ってくると思うんですよ。思うんですが、最近は服装にしたって本当に多くの種類があるんですよ。その中で、特に若い人に目立つ傾向として、機能よりもブランドで選んで、さらに著名なブランドや値段の高い物が高機能であると勝手に思い込んでいるところがあるんですね。
小玉▲自分で判断するよりも、プロであるお店の人に自分のやりたいことなどを相談して買ったほうがいいですよね。ブランド買いしようとしてマムートを買おうとしたら、マムートにも綿のシャツありますし(笑)。それを着て登らないほうがいいわけで。
三笘●それだったらユニクロの“ヒートテック”のほうがいいですからね(笑)。
小玉▲カッコいいからってマムート買ったけど綿のシャツだから、それで高尾山とか登らないほうがいいよ……ってちょっと説得力がありますでしょ(笑)。
三笘●ははは。似たような話では、日本で買うと高いので、海外通販などで仕入れちゃう人……それはそれでいいんですけれども、実際にモノを見ないで買ってしまうのは個人的にはあまりよろしくないとは思いますね。
小玉▲その装備や服装を揃えたり、準備をする際には、実際に行くところがどんなところをか想像しておく必要もありますね。
三笘●それはそうですよ。たとえば……旅行に行くとしますよね。それで旅行用の服を買おうと洋服屋さんに行ったとします。そこで「すみません、旅行に行くんで服を揃えようと思うんですが」、「いいですね。どこに行くんですか?」、「まだ決めていません。シベリアかも知れないしハワイかも知れないし」……なんてやり取りないですよね(笑)。
小玉▲ははは、ないですね。

m20150619_b.jpg
雪山に行くならば雪山にあった装備品を整える。こんな当たり前のことが安全な登山の第一歩
三笘●両方で着られる服ってそうないと思いますよ。登山用具店で「どこの山に行くでもクライミングでもハイキングでも着られる服ください」って言っているのと近いですよね。
小玉▲これから行く山がどういう場所にあってどういう気候なのか、それを想像しておくのが重要なんですね。
三笘●それが大事だと思います。単なる旅行と違って登山の場合はそんなに大荷物を抱えて行けないですし、また行くべきでもありません。だからこそ必要最低限の荷物、装備で済むように準備をする。服装や用具を揃えるところからいざ家を出る前まで、行き先である山のことを想像していたいものですね。それもまた実際に登っていないときの楽しみではないでしょうか。
……今回はこんな出発までを考えてみました。次回は「泊まりがけの登山」などをお話ししましょうか。
小玉▲お、楽しみです。それでは次回もお楽しみに!(つづく)