いやー、気が付けば11月も後半ですよ。すっかり寒くなりましたねえ。こう寒くなると、生来の出不精にさらに磨きがかかり、まったく出かけなくなるワタクシですが(暑い時期にもそんなことを言っていたような気も)、そんな時は部屋でゆっくり映画でも観てるのが一番ですよねー、というわけで、今回からしばらくは俺のオススメ映画を紹介していこうと思います。もちろん俺が紹介するわけだから、ただの映画ではなく、ロックな映画ですぜ。音楽総研的ロック映画のススメ!……と言いつつ、今回はブルーズに魅せられた白人少年が主人公の『クロスロード 』ね(笑)。
クロスロードは86年公開のアメリカ映画で、ブルーズミュージシャンのロバート・ジョンソン (実在します)が悪魔と契約を交わし、恐るべきギターテクニックを手に入れた……という伝説をモチーフにしたロードムービー。主演はアラフォー世代には有名な『ベスト・キッド 』のラルフ・マッチオです。彼が演じるユジーンは、ジュリアード音楽院でクラシックギターを学び、将来を嘱望されている学生なんだけど、トルコ行進曲をブルージーにアレンジして弾いちゃうほどのブルーズ好き。自室でもクラシックギターを練習しつつも、やはり気になるのはブルーズ。中でも伝説のブルーズミュージシャン、ロバート・ジョンソンに憧れていて、彼が遺した29曲以外に、実はもう1曲存在するという噂を聞き、その1曲を探し出して自分でレコーディングするという夢を持ちます。そして、その30曲目を知っているという、自身もまた伝説のブルーズミュージシャンであるブラインド・ドッグ・フルトンこと、ウィリー・ブラウンに出会い、彼に言われるまま二人でミシシッピへ向かい、さまざまな経験を通してブルーズを体得する……というストーリー。
映画の中でウィリーが繰り返しユジーンにブルーズは経験だ、テクニックじゃない、と語るのが印象的でね、田舎の高校生だった俺は「俺もヒッチハイクしてミシシッピとかに行かないとブルーズが弾けないんじゃないだろうか」なんて悩んだ覚えがあります。いや、なんかバカみたいだけど、昔のミュージシャンって破天荒な人が多かったでしょ? とんでもなく悪かったり、家庭環境が複雑だったり。いたって普通のサラリーマン家庭に育った俺は、ミュージシャンとしての素養が足りないんじゃないか、なんてことを気にしてたんですよ。もちろん、映画の中のユジーンもウィリーに坊ちゃんだとからかわれながらも、さまざまな経験を通してブルーズのなんたるかを掴むわけで、あえてグレなくても、いろいろ経験して、その経験を音楽に反映させることが大事なんだとは理解してたけど、ユジーンは結構な経験をしてるからさ(笑)。まあ、「ブルーズは失った女を想う、男の悲しみだ」なんてセリフもあり……失恋なら腐るほどしてるから(涙)、俺も大丈夫かね。
さて、ブルーズだけでも十二分にロックファンにも魅力的なこの映画ですが、最後の最後にロックファンが大喜びするであろうクライマックスが用意されています。実はロバート・ジョンソンだけではなく、ウィリーもまた悪魔と契約を交わしていて、その契約を反故にするために悪魔を探しにミシシッピに来た、というのが旅の真相で、再会した悪魔に「俺と新たに契約したギタリストと対決して勝てたら契約を解除してやる」と言われ、ウィリーの代わりにユジーンが対決することになるんだけど、その悪魔と契約したギタリストが、音楽総研にも何度か登場している天才ギタリスト、スティーヴ・ヴァイ (WHITESNAKE、デイヴ・リー・ロスバンド等で活動。現在はソロ)。ブルーズギタリストじゃないんだよ(笑)。でも、スティーヴのなりきりっぷりは、「おお、悪魔のギタリストっぽい」と思わせるのに充分の迫力で、ものすごくカッコいい。エリック・クラプトンじゃこうはいかなかったろうし、他に誰がやれるんだ、って言われてもジミヘンぐらいしか思いつかないかも。
スティーヴとの対決は、当然、ブルーズとは言えない(笑)ギターバトルになるんだけど、ブルーズミュージシャンだけが悪魔と契約をするわけじゃないんだろうし、これはこれであり……なのか(笑)?! まあ、ユジーンもクラシックを学んだことなんかのそれまでの経験を活かして対決に勝利するわけで、ブルーズが主題ではあるけど、さまざまな経験を通して大人になることを描いた映画だと思えば問題ないか。それまでのブルーズ修行はいったい……とは思うけど(笑)。
この映画を観ただけではブルーズのなんたるかはわからないかもしれないけど、全編に流れるブルーズはたまらなく魅力的で、俺にとってそうだったように、この映画がロバート・ジョンソンやブルーズへの入り口になる人もいるのでは。ブルーズはちょっと……なんて思ってるロックファンに
ぜひ観てもらいたいな。自信を持っておススメしますよ。