第67回 ロック映画編 スパイナル・タップ――おバカであるあるな架空バンドの架空ドキュメンタリー

気が付いたらもうクリスマス、年末ですよ! 早いもんですねえ。でも、例年ほど世の中が浮かれていないような気がするのは、もしや選挙があったから? 復興もまだまだ、とにかくこれ以上悪い世の中にならないように……と祈るばかりであります。

さてさて、今回も俺のオススメロック映画をご紹介しますよう。84年公開の『スパイナル・タップ 』! 
架空の英国大御所ロックバンド、「SPINAL TAP」のアメリカツアーを追っかけるドキュメント、という設定の映画です。「LED ZEPPELIN」なんかのドキュメンタリーを髣髴とさせるし、けっこう本物っぽいんだけど、内容は物凄くバカ(笑)。……そう、またまたバカ映画のご紹介なんですよ。みなさんそろそろお気付きかと思いますが、ワタクシ、バカ映画やB級映画が大好物でございます。おほほ。でもまあ、そういうのが続くのは、ロック映画にB級映画が多いってこともあるんだけどね。

spinal.jpg劇中に登場するバンド、SPINAL TAPは80年代初期によくあったタイプのハードロック/ヘヴィメタル(HR/HM)バンドで、バカっぽくはあるんだけど(大真面目にやっています)、意外とメロディが良かったりして、曲自体もけっこうカッコいい。でも、歌詞が「俺の彼女はデカイ尻〜」だったり、「愛の農場で君の豆畑を耕す〜」とかだったりして、ひどすぎるんだよ(苦笑)。ま、80年代のB級バンドには、これとそう変わらないのがいたから、実際にありそうでもあるんだけど、このギリギリアウトな感じがきちんとギャグとして成り立っているのは、ハードロック/ヘヴィメタル(HR/HM)をわかっている人たちが作ってるからだろうと思います。愛を感じるし(笑)、HR/HMファンが観ても、嫌な感じはしないと思う。

でも、ミュージシャンたちは「バカにしている」だの「あんなのと一緒にしてほしくない」だのと、結構文句言ってたような覚えもあるなあ。他のバンドを批判するときに「まるでスパイナル・タップだ」とか言ってたりもしたし。日本における"ヘビメタ"と同じような、ちょっとバカにしたイメージっていうとわかってもらえるかな。公開当時、HR/HMミュージシャンはまだ若い人が多かったし、自分たちも大真面目に不真面目な歌を歌っていたから、からかわれてる感じがしたんだろう。最近だと、ミュージシャンたちが「すごくリアルだ」とか「良い映画だ」とか褒めてるのをよく聞くし、意見が変わってきてるように思うんだけどね。実際、ふざけてはいるけど、本当にありそうなエピソードばっかりで……、まあ、俺はSPINAL TAPのようにワールドツアーをするほど売れたことがないから(泣)、全部が全部リアルだって実感したわけじゃないけど、それでも、あるある! ってシーンがたくさん。

例えば、楽屋からステージへの通路が迷路のようになっていて、ステージに辿り着けなかったり、ステージセットがうまく動かなくて閉じ込められたりとか(笑)、バカみたいだけど、こういうことって実際にあります。ステージまでが遠くて迷いそうになる会場ってあるし、ステージセット(大小の差はあれど)がうまく動かないなんてことはザラ。他にも誰だかわからないレコード会社の偉い人に紹介されて作り笑いしたり……、有名なバンドだとよくあるんだろうな。俺は逆に「えーと、誰だっけ……」なんて顔されたことがありますけど(苦笑)。

そして、バンドの中心人物の二人が仲違いするところなんてめちゃくちゃリアルだ。バンドやってると言い争いなんて日常茶飯事だし、そこにメンバーの彼女が絡んでくるのも、リアルすぎて身につまされる。バンドって(メンバーに女性がいる場合は除き)、学生時代の男同士の仲良しグループみたいなところがあって、男同士でツルんでる分にはうまくいくんだけど、そこに誰かが彼女を連れてくると、急にギクシャクしたりするんだよね。そしてその彼女が演出や運営に口出ししたりし始めるともう最悪。その彼女を連れてきたメンバーは、自分の彼女だから的外れなことでも意見を尊重するけど、他のメンバーにしたらお前何様だ、ってなもんでさ。これ、俺も経験あるし、バンドやったことがある人はみんな同意してくれるんじゃないかな。よくあるんだ。女性蔑視じゃないですよ。メンバーが女性だけなら、逆の現象があるだろうし……。

ところで、SPINAL TAPは実際に演奏も出来るバンドで、映画とは関係のないアルバム も出していれば、ライヴもやっています。そのへんがバカ映画でも妙な説得力がある所以でしょう。ちなみに監督は『スタンド・バイ・ミー』等で知られるロブ・ライナー。B級映画なんていっても、一流のB級なんですよ。ロックファンならきっと楽しめるはず。オススメします! ……あれ、考えてみたら今回で今年最後? 最後がこれでよかったのか、俺(笑)。とにかく、みなさまよいお年を!

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