前回はちょっと毛色の違うアーティストを紹介しましたが、今回はいつもの音楽総研らしいアーティストを紹介しちゃいますよう。LAメタルの重鎮、「DOKKEN」です! ……DOKKEN、今も現役だけど、来日するわけでも新譜が出たわけでもなく……どんだけ時代に逆行してるんだ、と我ながらちょっと呆れてますが、流行なんか関係ない! ということではりきっていきましょー。
LAメタルといえば、「MÖTLEY CRÜE」や「RATT」が代表格だけど、DOKKENはそのふたつに続くバンドのひとつ。88年に一度解散するまでは、ここ日本でも大人気でした。ちなみに、LAメタルとは、大雑把に言うとLA界隈で活動していたハードロック/ヘヴィメタル(以下HR/HM)バンドたちのことを総称した言葉で、音楽性というよりも、その地域で勃発したムーヴメントのことです。たくさんのバンドがいたし、音楽性はそれぞれ違いました。ただ、なんらかの共通点はあって、聴くと「ああ、LAメタルだ」とか思ったりするんだけど。
80年代、全盛時代のメンバーたち。
再結成は……してほしくない!?LAメタルのバンドたちは、MÖTLEY CRÜEやRATTがそうだったように、ルックスが派手なバンドが多かったんだけど、そんなバンドの中には演奏技術が後回しのバンドもいてね。「ポーザー(カッコだけの人)」なんて言葉が流行ったのもこのころだったかな。MÖTLEY CRÜEもRATTも、ポーザーなんかじゃないけど、彼らのルックスだけを真似て、演奏や楽曲はお粗末、というバンドも多かった。
そんな時代にあって、DOKKENはひと味もふた味も違いました。髪の毛がちょっと逆立っていたりはするものの、決してルックスが売りのバンドではなくてね。メロディアスなヴォーカルライン、分厚いハーモニー、テクニカルなギター、そしてなによりも完成度の高い楽曲で、彼らは数少ない「LAメタルの正統派」と呼ばれていたっけ。何をもって正統派とするのかわからないけど、DOKKENにはシリアスで硬派な曲が多いことと、そこはかとなく漂うヨーロッパの香り(HR/HMの本場は英国、ヨーロッパとされる)が正統派と呼ばれた所以かもしれない……なんて、偉そうに書きましたが、俺がDOKKENのファンになったのは単純にジョージ・リンチのギターに魅せられちゃったからでした。
DOKKENを初めて聴いたのは中学のころで、そのころの俺は、とにかくギターヒーローがいるバンドを聴き漁っていたんだけど、情熱的で、今にも火を噴きそうなジョージのギターは「真打登場!」って感じでした。フレーズも音色も個性的で、一発でジョージだとわかる。LAメタルのギタリストたちの多くがアメリカ人らしくカラっとした音だったのに対し、ジョージの音はどこか湿り気があって、それも俺の好みだった。俺のNo.1はそのころからオジー・オズボーンのバンドのジェイク・E・リーだったけど、ジョージに浮気しそうになったことも何度かあります(笑)。ちょっと専門的なことを書くと、ジョージは、ナチュラルマイナースケールやペンタトニックスケール上では外れた音とされる、♭5th音(減5度)を連発する人なんだけど、それがまた刺激的でねえ。俺もジョージの影響で、その音をたくさん弾くようになっちゃいました。ただ、それをやるとジョージのパクリにしか聴こえなかったりするので、意識して弾かないようにしてた時期も。でも、今はもう「自分のものにした!」と開き直って弾いています(笑)。
さて、DOKKENの魅力はもちろんジョージだけじゃない。他のメンバーも……特にシンガーのドン・ドッケンの存在がDOKKENの特異さを際立たせています。HR/HMって、やっぱり迫力ある太い声だったり、オペラティックなハイトーンだったりがフィットすると思うんだけど、ドンはポップスを歌ってもはまりそうな、ソフトで甘い歌声の持ち主でね。でも、これが不思議とジョージの激しいギターに合うんだな。ただ、ドンとジョージは何度も決裂していて、今も違うギタリストがバンドにいます。ドンとジョージとの間にはケミストリーがあるし、本人たちも事あるごとにそう発言してたりするから、一緒にやればいいのに、と思うんだけど、メンバーの仲が悪いんですよ、DOKKEN(苦笑)。
まあ、メンバーたちは「不仲はマネージメントの戦略だった」とか、「マスコミに誇張された」なんてことを言ってるんだけど、仲が良さそうにも見えない(苦笑)。そんなわけで、他のバンドには全盛期のメンバーで再結成してくれ、なんてことを願う俺ですが、DOKKENに関しては……。またすぐに喧嘩別れしそうだしさ。おまけに、ドンは昔のように歌えないみたいだし、ジョージはDOKKENとは程遠い音楽をやりたがるし……というわけで、DOKKENは再結成してほしくないバンドの最右翼です(笑)。いや、ファンだからこその発言だからね。ほんとはまた観たいです、はい。