音楽総研は圧倒的にハードロック系のアーティストの記事が多いので、たまにはちょっと毛色の違うアーティストを……というわけで、今回は35歳の若さで亡くなったブルーズ・ギタリスト「スティーヴィー・レイ・ヴォーン」をご紹介します!
ブルーズを聴き始めたのっていつごろだったかなあ。中学生のころから「エリック・クラプトン 」なんかを聴いてはいたけど、ブルーズだとか意識していたわけじゃなかったし……。そういったアーティストに対する当時の俺の印象は、渋いなあ、とか、こんなのも弾けたらいいな、とかその程度で、最初から興味があったわけじゃなかったな。ただ、日本の平均ブルーズ年齢(いくつやねん)と較べると、だいぶ早めだった気がします。高校生のころにははっきりとブルーズ好きを自覚していました。
最近あんまりギター雑誌を読まないので、今の若いギタリストたちがどういう影響を受けているのかよく知らないんだけど、俺が学生だったころに好きだったギタリストたちは、ほとんど全員がブルーズに影響を受けたと語っていたものでした。そうすると当然、ブルーズってどんなんだろ? と気になりだすわけですよ。そのころにはなんとなく、「俺はブルージーな(と称されている)曲が好きなんだな」ということに気付いてもいたし……。で、いろいろとリサーチしてみると、「CREAM 」や「LED ZEPPELIN」なんかのオリジナルだと思っていた曲が実はブルーズのカヴァーだったり、オリジナルの中にもブルーズを元にした曲がたくさんあったりすることを知ってね。
で、それなら本物を聴いてみよう、となるんだけど、いろいろあり過ぎて何を聴けばいいのかわからない。じゃあとりあえずオムニバスだろと、『Blues Best』とかそんなタイトルのアルバムを借りてみたら、これが黒人のブルーズマンたちがアコギでブルーズを弾き語ったりしているもので、そんなのが何をどうしたらツェッペリンに化けるのかわからないし(笑)、当時の俺には退屈に感じられました。本物のブルーズはよくわからんと。でも、「映画の『ブルース・ブラザーズ 』はカッコいいなあ、あれは本物のブルーズじゃないのか?」とも思っていたら、そこではたと気付いたのです。ブルース・ブラザーズって白人じゃん、と。そしてエレキギターだ、と(笑)。黒人だから本物、白人だから偽者ってわけじゃないですよ、念のため。
そんなわけで、白人がエレキギターで演奏するブルーズのほうが俺好みなのかも……と、リサーチ対象を変更。そして「ジョニー・ウインター 」やスティーヴィーに出会うわけです(中学だったか高校だったか覚えてない)。ジョニー・ウインターもそうだったけど、とくにスティーヴィーのプレイが俺の期待通りのサウンドで、「おお、これだ!」って感激した。とんでもなくぶっとい音のギターは、熱くて激しくて、緊張感すらある。そしてロック要素もあったから、俺には入りやすかったんだよね。
まあ、そのロック要素のせいで、純然たるブルーズとは違うなんて人もいるけど、スティーヴィーのプレイからはブルーズを愛していることが物凄く伝わってくるし、それでいいんじゃないの、と思っています。「ゲイリー・ムーア」がブルーズを演ったときにも同じような批判があったけど、二人とも、ロック好きな若い世代にもわかりやすい演奏をしてくれたとも言えるわけで……彼らを入り口にして、もっと深い世界に入って行く人もたくさんいたんだよね。もちろん、俺もその一人。今は純然たるブルーズ(笑)も愛聴していますよ。
スティーヴィーのライヴは残念ながら未経験。ビデオは観たし、ライヴCDも聴いたけど。当然と言っていいのか、ライヴはスタジオアルバムを越える迫力でね。生で観たかったなあ。日本には85年に一度だけ来てるんだけど、そのころはまだスティーヴィーのことを知らず……。田舎の中学生だったから知ってても行けなかっただろうけど。俺が上京した年、スティーヴィーが兄のジミー・ヴォーンとレコーディングしている なんてニュースを聞いて、日本にまた来ないかな、なんて期待していたら、なんとヘリコプターの墜落事故にあい、スティーヴィーは亡くなってしまいます。長い間彼を蝕んでいたアルコール中毒とドラッグ中毒から立ち直って、精力的な活動を始めていた矢先だったのに……。
亡くなってから今年で22年。ずいぶん経ったけど、最近知り
合った20代のギタリストがスティーヴィーのマニアだったし、アメリカで人気の「ジョン・メイヤー 」を始め、いろんな若手ギタリストからスティーヴィーの影響を感じることも多い。スティーヴィーの音楽は、今の若い世代にも訴える魅力が充分あるってことだよね。20代の若者(笑)とスティーヴィーのことを話せるなんて嬉しいけど、そうすると尚の事、偉大なギタリストの不在を残念に思う……。