ご存知のとおり、本誌「あそびすと」の編集長は女性である。そしてこの原稿を書いている私も、女性である。
その昔、女性は女性であることだけを理由に蔑まれ、差別される時代があった。だが様々な困難を乗り越え、今や時代は声高にジェンダーフリーを叫ぶ必要もなく、男と女の平等性はもはや当たり前に機能している。
いや、むしろ女性は逆に、女性であることを理由として、そして武器として、男性よりも優位な立場にも立ててしまう。したたかにというよりも、むしろ女性が女性であるがゆえに、そもそも持ち合わせたその資質ゆえに、そうしたことをいとも簡単にやってのけるのだ。
『桃まつり』という、なんとも魅惑的なタイトルの上映イベントがある。昨年、渋谷にて2週間限定で上映されたのち、大阪、名古屋、京都とその公開を拡大して話題を呼んだショートフィルム祭りだ。今年は参加監督もリニューアルされ、女性本来のみずみずしく、そして毒を胸元に隠し持ったかのような感性が見事に花開いている。
例えば山崎都世子監督の『たまゆら』では、女性でしか味わうことのできないKissが描かれる。妊娠検査薬を前に、物思いにふける主人公。彼女が思い出すのは、若かりし頃の恋愛。それもありふれた普通の恋愛ではなかった。女性としての自信のなさを表すかのように、彼女が選ぶ男性はどこか女性的だ。女性としての成熟を心から喜ぶことのできない彼女に、偶然にも懐かしい人影が現れる…。
最後の台詞に思わずドキリ! としてしまった私だが、その後のエンドロールでそれは杞憂だったことに気づかされる。ここでそんなふうに思ってしまったこと自体、私自身が悲観的な恋愛観を持っていた証拠だったのかもしれない…と、またもや冷や汗が流れ出そうにもなったわけだが。
他、計9作のビター・スイートな作品たちが、思いもかけずに私たちの心を抉り出す。せっかくのレイトショーだから、ほろ酔い気分で劇場のシートに体をうずめ、自分でも気づかなかった女性の部分が曝け出されるのを楽しんでみるのもいいかもしれない。
もちろん、そんな乙女の秘密を知りたい男子諸君にもオススメな作品群なのだ。
監督:山崎都世子(たまゆら)/粟津慶子(収穫)/山田咲(タッチ ミー)/篠原悦子(マコの敵)/矢部真弓(月夜のバニー)
脚本:監督に同じ
出演:阿久根裕子 /安藤匡史 /佐々木嘉子/やまおきあや
配給:桃まつり実行委員会
ジャンル:邦画
公式サイト:http://www.momomatsuri.com/