少年サムがサッカーに青春をかける映画ではない。タイトルの『サムサッカー』とは親指(サム)を吸う人(サッカー)を意味する。アメリカの中流家庭で暮らす主人公は自分の欠点に悩み、周囲の人たちとの人間関係も上手く築けずにいた。そんな彼が不安を紛らわす唯一の方法は、「親指を吸うこと(サムサッキング)」だった。
NIKEやGAPなどのCM界で名を馳せる気鋭のアーティスト、マイク・ミルズ監督の長編デビュー作。主役のルー・プッチは本作でベルリン国際映画祭銀熊賞・最優秀男優賞を受賞。『コンスタンティン』のキアヌ・リーヴスやティルダ・スウィントンも出演する話題作だ。
ゲーム、ギャンブル、アルコール、タバコ、薬物の『依存』と聞くと、何やら不穏な印象を受けるが、買い物、メール、インターネット、そして親子や恋人等、 人間関係そのものへ『依存』してしまうこともある。思えば我々人間は、疾患と診断されるかどうかの程度の差こそあれ、常に何かに 依存しなければ生きていけない存在なのだろう。
17歳の主人公の親指吸いは少し奇妙かもしれない。できるならば即刻やめてしまったほうが、本人のためにも周囲のためにもいいのだろう。でも、その依存をなくすために多大なエネルギーを消費し、待ち受けていたはずの成功を逃してしまうのだとしたら、本末転倒だ。人生を送るうえで、何がいちばん大切なのか? それを見極めながら生きていくのがいい。100%完璧な人間なんていないのだから。
サムサッカーコレクターズ・エディション(DVD)
監督:マイク・ミルズ
脚本:マイク・ミルズ
出演:ルー・プッチ/ティルダ・スウィントン/キアヌ・リーヴス
ジャンル:洋画
公式サイト:http://bd-dvd.sonypictures.jp/thumbsucker/