ネイビーシールズ

20120625cpicm.jpgオサマ・ビンラディンを暗殺したことで一気にその実力が世界に知らしめた米海軍特殊部隊、ネイビーシールズ。SEALSとは、海「SE」、空「A」、陸「L」の複数形。俳優ではなく、実際の現役隊員を起用して作り上げた本作は、文字通り無名の俳優たちによる映画にも関わらず、そのド迫力、本物が醸し出すオーラからか、堂々の全米初登場第一位に躍り出た。

20120625cpic1.jpg麻薬取引と武器密輸で莫大な富を築きあげる男、クリスト。彼と、東南アジアのテロリスト、アブ・シャバールとの関係を探るため、CIA女性エージェントがコスタリカに潜入する。だが、彼女はクリストらに拉致されてしまう。彼女を奪還するため、アメリカは直ちにネイビーシールズ出動を要請する……。

本作はリアルにとことんこだわっている。ストーリーこそフィクションだが、作戦はすべて隊員たちの案によるもので、脚本に書かれたセリフが実際のものでないと「そんな風には言わない」と隊員たちがセリフを言い換えたという。そのあまりのリアルさに、ペンタゴンから「機密情報が漏れている」とクレームが殺到したほどだ。ヘルメットカメラに据えられたカメラから伝わる臨場感、息づかいは、まるで自分がその現場にいるかのような錯覚に陥るほどの緊迫感を醸し出している。

余計な思い込みがないよう、普段から私はなるべくパンフやプレス類を事前に読まず、まっさらな状態で映画鑑賞することを心掛けている。当然、本作もそうした状態で観たのだが、出演していた俳優たちがいわゆる職業俳優ではなく、実際のシールズ隊員だと知って驚いた。確かにそう言われれば家族との別れのシーンなんかは仰々しい感が否めなかったかもしれないが、その他はこれが映画の素人が演じたものとは露とも思わなかった。それほど彼らの演技は素晴らしかった。……否、彼らにとっては演技ではなく、撮影は日常の訓練の延長上のものだったから、演技力云々のレベルではなく、それが自然に観客にも伝わったのだろう。

また、そのストーリー性にもぜひ着目したい。単なる隊員たちの技術を見せつけるためのノンフィクションものではなく、きちんとしたドラマを盛り込むことに成功しているのだ。そういう映画のつもりで観ていずに油断していたからか、ついつい3回くらい涙が出てしまった。

これはアメリカ映画だから、もちろんアメリカ人が善人で、アッラーを崇拝する国の人物が悪の存在として描かれている。私のような庶民にはあまり想像もつかない話だが、戦争というのはとてもお金が儲かるらしい。映画は勧善懲悪の方が感動を呼ぶし、9.11のこともあるから敵はそちら方面のほうがアメリカ人の心を掴みやすい。当然本作もそうした作りになっているが、キリスト教が絶対に正しくてイスラム教が完全に悪というのは真実ではない。アメリカが大金をつぎ込んで現代の戦争ものの映画を作るとなったらこの構図しかない……と割り切って観ることができるのなら、映画としての本作は申し分ないエンタメ作だ。


監督:ルパート・サンダース
脚本:カート・ジョンスタッド
出演:ローク/マイキー/デイブ/エイジェイ/サニー/レイ/ダンカン・スミス/ワイミー/ミラー/ロゼリン・サンチェス
配給:ギャガ
公開:6月22(金) TOHOシネマズ六本木ヒルズ他全国順次ロードショー
公式HP:http://navyseals.gaga.ne.jp
 

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