英国史上初、そして唯一の女性首相マーガレット・サッチャーを、アカデミー賞女優メリル・ストリープが熱演。86歳の齢で認知症に苦しむマーガレットが過去の栄光と挫折を振り返りながら綴る本作は、「鉄の女」と呼ばれた彼女が直面する老いの現実、そしてその中にあって決して埋もれない彼女にとっての“幸せ”を描き出す。
夫は他界し、子供たちも独立し、今はひとりで晩年を送るマーガレット・サッチャー。夫の遺品を整理する決心がつかないマーガレットだが、それもそのはず、夫デニスの幻影はまるで彼がまだ生きているかのように彼女に話しかけ、彼女と踊り、そして彼女とキスを交わすのだ。自叙伝に誤って旧姓でサインをしてしまったマーガレットに、ふと過去の出来事が思い出されていく……。
雑貨商出身の英語訛りを完璧にマスターしたからか、先日の英国アカデミー(BAFTA)賞では見事、主演女優賞に輝いたメリル・ストリープ。さすがに若いころのマーガレットに扮しているのは別の女優だが、首相としていちばん油の乗っている時期から高齢になった現在までをメリルが演じている。
更年期障害の影響からか、観ているこちらまでもがハラハラしてしまうパワハラ発言等、首相の座を追われる発端となったそうした描写も含め、マーガレットを「良き人」としてだけではなく、共感などほど遠い嫌味な人物として描いている点、そして夫の幻影に寄り添い、悩まされ、決別する心の葛藤等、様々な要素が万華鏡のようにスクリーンに描かれる。そこにあるのは「鉄の女」であると同時に、家庭を持つひとりの「女」、老いてなお人生をまっとうせんとするひとりの「人間」の姿なのだ。
今年は他にも、『J・エドガー』、『マリリン 7日間の恋』等、歴史上の人物を題材にした作品が目白押しだ。2月26日(日本時間27日)にハリウッドで行われる第84回アカデミー賞授賞式で、メリルはオスカーを手にすることができるだろうか(編集部注・主演女優賞を獲得しました)。
監督:フィリダ・ロイド
脚本:アビ・モーガン
出演:メリル・ストリープ/ジム・ブロードベント/アレキサンドラ・ローチ/ハリー・ロイド/オリヴィア・コールマン
配給:GAGA
公開:3月16日(金)、TOHOシネマズ日劇 ほか全国ロードショー
公式HP:http://ironlady.gaga.ne.jp
あそびすと記者会見:『メリル・ストリープ来日記者会見』
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