ヒューゴの不思議な発明

20120224cpicm.jpg巨匠マーティン・スコセッシ監督が、その齢で3Dに挑戦した感動大作。孤児である少年と夢を失った老人の再生の物語は、老若男女、映画ファンすべてを満足させるに違いない。

20120224cpic1.jpg1930年代、パリ。父を亡くした少年ヒューゴ(エイサ・バター・フィールド)は、駅の時計台に一人、隠れ住んでいた。友達といえば、父親が残してくれた壊れたままの一体のカラクリ人形だけだった。ある日、駅構内のオモチャ屋でネズミのオモチャを盗もうとしたヒューゴだったが、店主のジョルジュ(ベン・キングズレー)に見つかってしまい……。

映画を愛するスコセッシが選んだのは、映画に初めてストーリー性を与えた実在の映画作家ジョルジュ・メリエスを描いた児童書。彼を題材に書かれたこの原作本は本国アメリカで様々な賞を受けるほどの人気作で、スコセッシは読むなりすぐに魅了されたという。それもそのはず、後にスコセッシ自身がインタビューで答えているように、原作のヒューゴは幼少期から映画に傾倒していたスコセッシそのものだったのだ。

映画そのものを題材にした映画史に残る名作といえば『ニュー・シネマ・パラダイス 』が思い起こされる。アプローチはまったく異なるが、本作もまたこの名作に肩を並べる金字塔となるに違いない。

家族を失った少年と、夢を捨て去った老人。それぞれの喪失がリンクしあい、反目しあっていた二人がやがて心を通わせていく。どんな大富豪であれ、どんなエリートであれ、何かを失ったことがない人などこの世にはいない。喪失のその暗い空洞に幸福が徐々にその顔を表し、そして一気に満たしていくさまを観たならば、誰もが胸を熱くするだろう。

本年度アカデミー賞最多11部門にノミネートされている本作。すでにゴールデン・グローブ賞では最優秀監督賞を受賞している本作だから、アカデミー賞でもオスカー必至との線が濃厚だ。筆者がこの原稿を書いている2月21日の時点ではまだ結果が出ていないが、きっと数々の賞を獲得するに違いない。


原作:ブライアン・セルズニック(『ユゴーの不思議な発明』)
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ジョン・ローガン
出演:エイサ・バターフィールド/クロエ・グレース・モレッツ/ジュード・ロウ/ベン・キングズレー/サシャ・バロン・コーエン/クリストファー・リー
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
公開:3月1日(木)よりTOHOシネマズ 有楽座他/全国ロードショー(3D/2D同時公開)
公式HP:http://www.hugo-movie.jp/
 

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