『007 』シリーズのダニエル・クレイグと、『インディ・ジョーンズ 』シリーズのハリソン・フォード、そして製作総指揮は『未知との遭遇 』、『E.T. 』、『宇宙戦争 』のスティーブン・スピルバーグ。ビッグネームが集結した本作は、カウボーイの時代にエイリアンが襲来するというなかなかオツなミスマッチテイストのエンタメ大作だ。
1873年、アリゾナ。真昼間の荒野で目を覚ました男(ダニエル・クレイグ)は記憶を失くしており、自分が誰であるか、どうしてここに一人でいるのかさえわからない。左手には見慣れぬ金属製の腕輪がはめられているが、もちろんこれにも見覚えがない。たどり着いた西部の町では、その夜空に怪しげな光が行き交い……。
原作はアメリカで人気のコミック。エイリアン大好きのスピルバーグは製作総指揮に徹し、監督は『アイアンマン』のジョン・ファブローに任せた形だ。『SUPER 8/スーパーエイト』もそうだったが、最近のスピルバーグは自ら監督はせず、製作側に回っている。
年齢からいっても実際に監督業を行なうよりは要所要所でアドバイスだけしていたほうが楽なのか、自分以外の新しい才能と一緒に仕事をしたいのか、または本作のようにアクの強い作品への批判の矛先を分散したいのか……本当のところは本人のみぞ知るところだろうが。
さて、作品はといえば、そのアイデアとしての切り口は斬新である。古代の壁画やエジプトのピラミッドなどからも、悠久の太古から未知の生命体が地球に飛来していたかもしれないという推測はされてきたが、実際にそれを映像化するとなれば、VFXの技術が円熟してきた今だからこそ成しえたものといえるだろう。
だが、だからこそアラが見えやすくなるもの事実だ。このアラとは、技術がどうこうというアラではない。それなりの予算をかけているだけあって、本作の映像は完璧だ。だが、コミックならコマとコマの間に想像力を働かせて見えない部分は脳内で自動的に補完することができるのだが、映画は見えているもの、聞こえるものがすべてだ。映像がリアルであればあるほど、ストーリーやキャラ設定の円熟さ、脚本の緻密さが浮き彫りになる。
本作はおそらく原作の空気感を忠実に再現したかったのだろうが、カウボーイたちのあの武器であの結果が出せてしまうのは、腕輪があるとはいえファンタジーそのものだし、エイリアンにしても、あの宇宙船で地球に来るくらいならもっと知能が高くてもよかったはずだろうに、予定調和の「負け」を前提に、遠慮しながら戦っているようで緊迫感があまりない。
この世界観ならば、ガーンと思い切ってコメディ寄りにしてしまったほうが、エンタメ作としてはもっともっと成功したのではないか? などと不遜ながら感じてしまった次第だ。
とはいえ、ボンドかと見紛うばかりのダニエル・クレイグの体を張ったアクションシーンも少ないながらあるし、ハリソン・フォードもそこはかとなく『インディ・ジョーンズ 』を彷彿とさせる。『トロン:レガシー 』のオリヴィア・ワイルドの裸体だって、家族連れで行っても安全なレベルで見ることができる。西部劇好きもエイリアン好きもスピルバーグ好きも、チェックしておいたほうがいい作品であることに変わりはないだろう。
原作:『カウボーイ&エイリアン 』(スコット・ミッチェル・ローゼンバーグ)
監督:ジョン・ファブロー
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ
脚本:ロベルト・オーチー/アレックス・カーツマン/デイモン・リンデロフ
出演:ダニエル・クレイグ/ハリソン・フォード/オリヴィア・ワイルド
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
公開:10月22日(土)より丸の内ピカデリーほか全国公開
公式HP:http://www.cowboy-alien.jp/
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